2022.07.29
CLASS1
施工しやすく、節がない。著名建築家が外壁に使用した「ラワン材」の使い方を比較で解明
建材ダイジェスト 編集部
この記事でわかること
CLASS1 ARCHITECT Vol.26では、設計事務所Eurekaに登場いただき、Eurekaが実際に使用した建材を紹介しています。
CLASS1 ARCHITECT Vol.26には掲載し切れませんでしたが、実はEurekaがもうひとつ、「コストパフォーマンスが良い建材」として紹介した建材がありました。
それが、株式会社 山康商店の「ラワン縁甲板」です。(※)
※山康商店では現在ラワンを扱っていません。山康商店への問い合わせはこちら
ラワン縁甲板は、“ラワン材”を使った廊下や壁用の板材です。
Eurekaが設計を担当した、既存住宅にモダンな離れを増設する「感泣亭(かんきゅうてい)」のプロジェクトにて、外壁用の仕上げ板として採用されました。
ラワン材は、建築用としてベニヤ板(ラワン合板)などに使われることが多く、外壁用として使用するのは珍しい木材です。
それではなぜ、Eurekaはラワン材を外壁に使用したのでしょうか。
この記事では、スギやイペなど、他の外壁用木材と比較しながら、ラワンの特徴を見ていきます。
まず、Eurekaが注目したのは「節がない」という点です。
「ラワンって節がないんです。例えば杉で節がないものって結構高いのですが、ラワンはグレードにかかわらず節がないので、よく使っています」
Eureka 稲垣氏 |
スギは数ある木材の中でも価格帯が幅広い木材で、数千円~数百万円ほど価格に差があります。特に節がないものは高級品で、価格も高くなる傾向にあります。
一方で、ラワンは価格帯に関わらず節がほとんどありません。「節がない板を使ってすっきり見せたい」というときは、コストパフォーマンス良く採用できる木材です。
二点目にEurekaが評価しているのが、「軟らかさ」です。
「ラワンは軟らかい材料なんです。イペとか、ウッドデッキに使われるような南洋材も節がないのですが、価格が高く凄く堅いので、施工も大変です。その点、ラワンは軟らかいので施工しやすい」
Eureka 稲垣氏 |
いわゆる南洋材も節がほとんどない木材ですが、そのような木材は非常に堅いため、切断やビス打ちに時間がかかり、施工の手間がかかります。
一方でラワンは広葉樹でありながらやわらかく、施工がしやすい木材。施工コスト・施工時間の短縮が可能です。
各木材の比重の差
ラワンと、スギ、イペの比較をまとめました。
ラワンは、節がほとんどなく、軟らかいため加工・施工がしやすい木材。Eurekaからも、見た目の良さと施工性が評価されていました。
一方で、ラワンは虫が発生しやすいデメリットがあります。特に屋外で採用する際は、保存処理や防虫処理がされているか注意が必要です。
CLASS1 ARCHITECT Vol.26では、Eurekaが実際に使用した建材8選を紹介。建材の使い方や実際に使用したレビューを全文無料公開しています。
屋根材や床材、壁材など、幅広い建材について採用のポイントや理由を語っていますので、素材選びの参考にぜひご覧ください。
今回紹介した建材メーカー
株式会社 山康商店 |
CLASS1 ARCHITECT Vol.25で、建築家岩瀬諒子氏が「トコトコダンダン」で使用した建材として紹介した、株式会社佐藤渡辺のポーラスコンクリート。
トコトコダンダンで使用したポーラスコンクリート
トコトコダンダンでは、平面と立面が同じポーラスコンクリートで構成され、「床にも階段にもなる」おおらかな場を作っていました。
なぜ、岩瀬氏はトコトコダンダンで株式会社佐藤渡辺のポーラスコンクリートを使用したのでしょうか?
今回は、ポーラスコンクリートと普通コンクリートを比較して、ポーラスコンクリートのメリットや、株式会社佐藤渡辺の特徴を見ていきます。
※ポーラスコンクリートとは
細骨材(砂)を使わずに、セメント・水・粗骨材(砂利)で作るコンクリート。コンクリートの中に連続した空隙があり、「雷おこし」のような外観をしています。
空隙率は25%~30%、圧縮強度は10N/㎟程度のものが多いです。
ポーラスコンクリート (透水コンクリート) |
コンクリート | |
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特徴 |
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コスト・工期 (※) |
工事費:6,900円 工期:打設のみ2日(養生別途) |
工事費:6,000円 工期:打設のみ4.5日(養生別途) |
主な用途 |
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※株式会社佐藤渡辺で、施工規模300㎡・施工厚さ10cmの舗装施工を行う場合
(用途:駐車場、施工場所:東京都内、昼施工)
ポーラスコンクリートは通常のコンクリートと比べて高い空隙率を備えることから、「水たまりができない」「表面温度の上昇を抑える」「緑化できる」「クラックが目立ちにくい」などのメリットを備えます。
一方で、ポーラスコンクリートは非常に硬く、生コンクリートと違って流動性がありません。そのため階段などの立面を施工しようとすると、各層毎に分離したような層状の模様ができやすくなります。
このように、環境性・透水性に優れる一方で、立面の施工が難しいため、主に道路の舗装で多く使用されています。
CLASS1 ARCHITECT Vol.25に出演した建築家・岩瀬諒子氏が「トコトコダンダン」で使用したのも「ポーラスコンクリート」でした。
トコトコダンダンでは雨が降った後にも人が座ったり、触れたり、くつろいだりすることが想定されたため、透水性が良くベタつかないポーラスコンクリートが採用されました。
そして、数あるポーラスコンクリートの中から岩瀬氏が選んだのは、道路舗装工事を中心とする建設会社・株式会社佐藤渡辺のポーラスコンクリートです。
ポーラスコンクリートで立面を施工
「できる限り『この場所はこう使います』と決めたくなかった。階段や壁を同じ素材で作って、階段なのか床なのか壁なのか、はっきりしないデザインにしたかった」という岩瀬氏。
平面と立面に同じ素材を使うことを意識して素材を徹底的に探していた岩瀬氏は、株式会社佐藤渡辺から「1メートル程度なら、ポーラスコンクリートで壁がつくれるかもしれない」と言われ、「これならイメージ通りのデザインができる」と採用を決めたといいます。
先述のようにポーラスコンクリートは立面での施工が難しく、舗装として平面に施工されることが多い建材です。そこで株式会社佐藤渡辺は、トコトコダンダン用に特注製作したバイブレーター(※)を用いてポーラスコンクリートを施工。
そうすることで、分離や模様を極力出さない、シームレスにつながる外観を可能にしました。
※コンクリートに振動を与えて締め固めるための機械
CLASS1 ARCHITECT Vol.25では、岩瀬諒子氏による「ポーラスコンクリート」のレビューを全文無料公開しています。
公園や遊歩道、外構などに使用する素材選びの参考に、ぜひご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.24で、本瀬齋田建築設計事務所 サモアーキが「空間が引き立つデザイン性のある建材」として紹介した、名古屋モザイク工業株式会社の「アートモザイクタイル パヴォーネ」。
鎌倉の集合住宅
本瀬齋田建築設計事務所 サモアーキが設計した「鎌倉の集合住宅」の外壁に使用され、珍しい色彩とモザイクタイルでありながら外壁にも使える点が評価されていました。
この「アートモザイクタイル パヴォーネ」は、タイルの素地としては「磁器質タイル」に分類されます。
タイルには多くの種類があり、素地によって「磁器質」「せっ器質」「陶器質」と分類することができます。
今回は、名古屋モザイク工業株式会社 商品開発部担当者の方へのインタビューをもとに、磁器質・せっ器質・陶器質それぞれの素地からなるタイルの特徴や強みを比較していきます。
旧JIS規格では磁器質・せっ器質・陶器質と分類していましたが、2008年のJIS規格改正により試験方法が変わり、分類名もⅠ類・Ⅱ類・Ⅲ類と変更されています。
旧分類表記(自然吸水率) | 新分類表記(強制吸水率) |
---|---|
磁器質(1.0%以下) | Ⅰ類(3.0%以下) |
せっ器質(5.0%以下) | Ⅱ類(10.0%以下) |
陶器質(22.0%以下) | Ⅲ類(50.0%以下) |
メーカーやカタログによっては、磁器質・せっ器質・陶器質の表記を残しているものが多く見られます。
次からは、磁器質・せっ器質・陶器質のタイルの特徴を紹介します。
パヴォーネ PVO-07
[名古屋モザイク工業株式会社]
石英や長石などを1,250度程度で焼いたタイル。
非常に綿密で硬質な素地で作られており、吸水率は3.0%以下と最も小さいタイルです。吸水性が低いため変形しにくく、水回りの壁・床や外装に用いられます。
名古屋モザイク工業株式会社のコメント
弊社では主に屋外の壁や床に、屋内でも耐水性や強度が求められる場合に、磁器質タイルをご提案しています。
グレモス GUR-23B-600
[名古屋モザイク工業株式会社]
粘土・長石などを約1,200度前後で焼いたタイル。
吸水率は10%以下で、磁器質タイルと同等の強度を持ちます。素焼きのような素朴な雰囲気のものが多く、主に外部壁・床に使用されます。
名古屋モザイク工業株式会社のコメント
せっ器質タイルも、主に屋外の壁や床を中心にご提案しています。また、土物らしい素朴な風合いを求められる場合もおすすめのタイルです。
弊社のせっ器質タイル製品では、「グレモス」が圧倒的に人気商品ですね。
バーガンディ EKP-F2760
[名古屋モザイク工業株式会社]
陶土や石灰などを1,000度程度で焼いたタイル。
多孔質のため、吸水率は50%以下と最も水を吸いやすいタイルです。強度が落ちるため外装には不向きですが、寸法精度が高いため、より近くで見ることの多い内装用タイルとして多く用いられます。
名古屋モザイク工業株式会社のコメント
陶器質タイルをご提案するのは、主に屋内の壁が多いです。
タイルの材質だけでなく、材質以外の要素──例えば釉薬の有無や表面の質感・サイズ・形・デザイン・色などによっても、おすすめの使用場所が変わります。
弊社ではこれらを総合的に判断し、建物の種類や使用部位などの諸条件に適したタイルや組合せをご提案しています。
CLASS1 ARCHITECT Vol.24で紹介した名古屋モザイク工業株式会社の「アートモザイクタイル パヴォーネ」は、インテリアや外装に使える「磁器質タイル」です。
昭和のビルにあるような色ムラと虹色の光沢が、鎌倉の街並みに馴染み採用されました。
名古屋モザイク工業株式会社によると、「パヴォーネ」は昭和の時代から続くロングセラー商品とのこと。「パヴォーネ(pavone)」はイタリア語で孔雀という意味で、虹色に輝く孔雀の羽をイメージした商品名が付けられました。
名古屋モザイク工業株式会社のコメント
「パヴォーネ」は自然な色むら・レトロ感を演出するために、特殊な施釉方法を用いて作られています。
手間のかかる工程ではありますが、それを長年変えることなく、手づくり感を大切にして丁寧に作っています。
「パヴォーネ」の人気の採用場所は、主にキッチンや洗面の壁や天板などの水回り。
また、光を反射して輝く質感や色彩などが特徴的なため、今ではリビングの壁や床の一部に差し色として使用するケースや、「鎌倉の集合住宅」のように磁器質の耐久性を活かして、外壁への採用も多いといいます。
今回は、3つのタイルの使い分け方と、本瀬齋田建築設計事務所 サモアーキが採用した磁器質タイル「パヴォーネ」について詳しくご紹介しました。
CLASS1 ARCHITECT Vol.24では、本瀬齋田建築設計事務所 サモアーキによる「パヴォーネ」のレビューを公開しています。建材・素材選びの参考に、ぜひご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.24 で一つ目の建材として紹介したのが、tototoの「フィッシュレザー」です。富山県南砺市利賀村の「消滅集落のオーベルジュ」にて、ランプシェードとして使用されていました。
魚の皮から作るフィッシュレザーは、日本であまり普及していない珍しい素材。初めて知る方も多いと思います。
そこで今回は、フィッシュレザーの特徴や建材としての用途を詳しく紹介。一般的に使用される牛革などと比較しながら、今まで使われてきた「革」とどのような点が違うのか解明していきます。
フィッシュレザーは、魚の皮の脂身除去、なめし剤の浸透、乾燥などの工程を経てつくられます。
基本的な製造工程は一般的な革とほぼ同じですが、魚の皮だとどうしても脂でべたつき、魚臭さが抜けなくなってしまいます。魚の皮に合った「なめし」の技術が確立されておらず、今までフィッシュレザーはつくられてきませんでした。
しかし、tototo代表の野口氏は数年をかけて、フィッシュレザーを少しずつ改良。革なめしの専門家や、「東京都立皮革技術センター」などの協力も得て、3年後、魚臭さがなく、丈夫でしなやかなフィッシュレザーを完成させることができました。
野口氏がフィッシュレザーの開発を続ける中で大切にしていたのは、「環境を守る、持続可能なものづくりをする」ということ。
フィッシュレザーは、刺身などに加工する際に廃棄される魚の皮を原料として使っており、野口氏はそれを革にすることで「生命の恵みを無駄にしないものづくり」を普及させようとしています。
ここからは、フィッシュレザーの特徴を、一般的に普及している牛革などと比較しながら見ていきます。
フィッシュレザーの特徴のひとつとして、「魚の皮」だとすぐにわかる鱗模様があることが挙げられます。
半透明のフィッシュレザーでつくられたランプシェード
また、なめし剤の浸透量を調節することで、革の透明性も変えることが可能です。
牛や豚の革でも、半透明の革をつくることは可能です。しかし魚の皮の方が厚みが薄く、牛や豚よりも脂を抜く作業に時間がかかりません。
野口氏曰く、「半透明にするなら魚の皮の方が適していると考えられる」とのことです。
現在tototoでは、ブリ・マダイ・スズキの3種類のフィッシュレザーを取り扱っています。また、今後はサケとマグロなど、新しい魚種の革が商品として追加される予定です。
牛革などの動物の革は、動物の年齢や部位によって、見た目だけでなく耐久性にも違いが出ます。
その点はフィッシュレザーも同様で、魚といってもアジやサバのように魚体が小さいものは鱗模様が出る代わりに皮が薄くなります。反対にマグロやサメのような大きな魚は、牛などの皮と同様の厚みとなり、革の耐久性も高くなります。
フィッシュレザーは、羊毛や絹などと同じ動物性繊維で染色をしやすい素材。一般的な革製品と同じく、衣料用の化学染料を使用して着色をしており、基本的にどんな色にも着色が可能です。
しかしtototoでは、今後フィッシュレザーをよりエコな素材とするため、化学染料による着色を見直しているといいます。現在、草木染による染色実験を行っており、2022年夏からは「天然染料で染めたフィッシュレザーのみ」が販売される予定です。
牛革など、動物の革ならではの特徴といえば、経年変化です。
フィッシュレザーもそのような革と同じく、使用年数につれて色味や艶が変化していきます。
画像のように、だんだんと濃く深い色合いになり、手の脂が染みこむことで手触りがより滑らかに、艶も出るようになります。自然素材としての変化を楽しむことができる素材です。
革が建材として使われているところはよく目にします。特に、家具やソファ張地など、インテリアとして主に使用されています。
フィッシュレザーも、財布やキーホルダーなどの小物利用に留まらず、今では建材としての利用も広がっています。
例えば、CLASS1 ARCHITECT Vol.24でも紹介したランプシェード。フィッシュレザーの透明度を調節し、絶妙な加減で光を透過させています。
さまざまなフィッシュレザーを縫い合わせた壁紙(試作品)
また、「ハイブランド新店舗の壁紙として利用したい」という声もあり、壁紙も開発中です。スズキ・ブリ・マダイなどさまざまなフィッシュレザーを縫い合わせたクロスの製作が進められています。
フィッシュレザーはその他にも、椅子・ソファの張地、家具の表面材、カーテンなどにも展開可能です。
野口氏曰く、「椅子の座面など摩擦の強い部分には、マグロ、サメ、フグ、ウツボなどの、分厚く強度があり鱗模様がほぼない魚が適している」そうで、一般的なレザーが使用される場所にも利用が期待できます。
フィッシュレザーは、廃棄される魚を「革」として再生させたサステナブルな新素材。今後、インテリアや壁紙として、建築への利用も期待できます。
4月28日(木)に公開したCLASS1 ARCHITECT Vol.24では、今回紹介した「フィッシュレザー」でランプシェードを製作した事例を詳しく紹介しています。
今までにない新たな素材の使い方や、地球に優しい素材に興味がある方は、ぜひご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.22 で、建築家浅子佳英氏が八戸市美術館に使用した照明として紹介した、山田照明株式会社の「システムレイシリーズ」。
八戸市美術館の展示スペース「コレクションラボ」の、作品を照らすウォールウォッシャー照明(ベースタイプ)として使用されました。
ウォールウォッシャー照明とは、壁面全体を光で洗い流すように、均一に照らす照明のこと。ビルや美術館などで使われることが多く、住宅ではあまり馴染みのない照明です。
今回は、同じく美術館などでよく使用されるスポットライトと、ウォールウォッシャー照明(ベースタイプ)を比較します。
それぞれの照明の使い方を押さえる中で、CLASS1 ARCHITECT Vol.22で紹介した山田照明株式会社の「システムレイシリーズ」ならではの特徴もわかりやすくご紹介します。
美術館の照明は、まず展示作品の色や素材感を忠実に表現することが求められます。色や素材感を忠実に表現するために必要なのは、演色性の高い照明を使用することです。美術館には、Ra(平均演色評価数)≧90が適しているとされています。
さらに、照明からの紫外線・赤外線が展示作品に影響を与えないようにすることも重要です。作品に対する紫外線や赤外線の影響は、JISの照度基準で定められています。
照明による影響を 非常に受けやすい (照度基準 150~300 lx) |
水彩画、素描画、泥絵具、織物、印刷、壁紙、切手など |
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照明による影響を 受けやすい (照度基準 300~750 lx) |
油絵、テンペラ絵、木製品、漆器など |
照明による影響を 受けにくい (照度基準 750~1,000 lx) |
石、宝石、金属、陶磁器など |
演色性や照度だけでなく、光を当てる場所も住宅などとは異なります。美術館は壁に展示物が掲げられることが多いため、壁を照らすことができるスポットライトやウォールウォッシャー照明がよく使われます。
個々の展示物に合わせてライティングを調整したいときには、スポットライトが使われます。
壁面全体を均一の照度で照らすウォールウォッシャー照明と異なり、一つ一つの展示物に合わせて照度や照射時間を設定できます。
また、美術館では、壁に掛かっている特定の絵画を照らすように使用されます。そうすることで、空間の中で作品に視線を集めることができ、狭い空間でも奥行きをもたらすことができます。
照明器具の見栄えが気になる場合や、光ムラを出さずに綺麗に見せたい場合は、ウォールウォッシャー照明がおすすめです。
壁に美術作品を何枚も並べる場合、スポットライトを使用すると、照明器具をいくつも並べなければいけません。また、スポットライトを使って一つ一つ綺麗に照射するのは高い技術が必要です。
ウォールウォッシャー照明で連続的に照らすことで、毎回ライトの位置を調整する手間をかけずに、光のムラなく作品を照らすことができます。また、天井面もすっきりと見せることができる点もウォールウォッシャー照明の特長です。
CLASS1 ARCHITECT Vol.22で紹介した、建築家の浅子佳英氏が「八戸市美術館」の照明に使用したのもウォールウォッシャー照明です。
国宝や浮世絵など、美術館所有のコレクションを複数並べて展示する「コレクションラボ」に使用されました。
※一部スポットライトも使用されています
浅子氏は、ウォールウォッシャー照明を採用した理由について以下のように説明しています。
建築家 浅子佳英氏
スポットライトを使うと天井面が正面器具だらけになるし、並べるのが少し手間ですよね。綺麗に照射するには技術が必要で、一般の人が適当にやると光ムラが出てしまう。
八戸市美術館のスタッフも毎回位置を調整するのは大変だから、壁面を一様に明るくする照明を最初に付けた方が良いだろうと。そのような考えから、ウォールウォッシャーの器具を探しました
引用:山田照明株式会社
なかでも山田照明の「システムレイシリーズ」は、幅73mmのスリムなデザインが特徴。他社製品よりもコンパクトな製品であることが決め手となり採用したといいます。
美術館照明は、照らす対象(美術品)を目立たせることが大切です。浅子氏は、数あるウォールウォッシャーのなかでも、照明の存在感を抑えたすっきりとした意匠の「システムレイシリーズ」がふさわしいと考え、採用に至りました。
CLASS1 ARCHITECT Vol.22では、今回紹介した「システムレイシリーズ」のほか、八戸市美術館に使用した7つの建材を紹介しています。
設計を担当した浅子佳英氏のレビューも併せて公開していますので、美術館・博物館などのデザインをされる方はぜひご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.22で特集した「八戸市美術館」のベンチには、株式会社ダイナワンの特注タイルが使用されていました。
「八戸市美術館」で採用されたのは、湿式成形で作られた施釉タイルです。タイルはその成形方法によって「湿式成形タイル」と「乾式成形タイル」に分けられ、見た目や適したサイズ、おすすめの採用シーンなどが異なります。
今回は、株式会社ダイナワンへの取材を基に、「湿式成形」のタイルと「乾式成形」のタイルとで、特徴にどのような違いがあるのか、どのような使い分けができるのかを比較します。
湿式成形タイルとは
ダイナワン社の湿式成形タイル
水分を含んだ粘土を、押出成形機でところてんのように押し出して板状にしたもの。好きな寸法に切断してタイルを成形できる。
原料の含水率が高いため、焼成時に収縮やひずみが生じやすい。
(AⅠ類、AⅡ類、AⅢ類 と表記される)
乾式成形タイルとは
ダイナワン社の乾式成形タイル
パウダー状の原料を金型に充填し、プレスして成形したもの。乾燥や焼成の時間が短い。
湿式タイルに比べて伸び縮みが少ないため、寸法精度が高く品質が安定している。
(BⅠ類、BⅡ類、BⅢ類 と表記される)
株式会社ダイナワンへの取材より、それぞれの特徴を表にまとめました。
湿式成形タイル | 乾式成形タイル | |
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見た目 |
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適した サイズ |
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形状の 自由度 |
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使用に 適した場所 |
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湿式成形のタイルは、焼き物特有の重厚感や自然な色幅が出るのが特徴です。レンガのような「味わい」や「温かみ」のある仕上がりになります。
ダイナワン社によると、「湿式成形タイルに釉薬を施すことは少なく、素材そのものの味わいを活かすことが多い」とのこと。
釉薬と掛け合わせた湿式成形タイル(TURQUOISE)
「しかし近年では、レンガタイルの持つ温かみやクラフト感を求め、土の質感と釉薬の妙を掛け合わせた商品も各社ラインナップするようになっている」といいます。
乾式成形のタイルは、均質でシャープな見た目が特徴。湿式成形に比べ色幅も少なく、使いやすいタイルです。
最近では、インクジェット技術により石柄などがデザインされたタイルもあり、本物の石かタイルか、一般の人が判別することはできないほど、デザインや表現の幅が広がっています。
湿式成形のタイルは、60mm×227mmの煉瓦サイズが一般的。正方形の形状だと、100×100~200×200くらいまでの形状が製造しやすく、長方形の形状で、幅40~120×長さ100~230くらいまでの形状が製造しやすいといいます。
乾式成形は使用する型によってサイズが決まってしまいますが、湿式成形タイルの原材料となる粘土は可塑性があるため、「寸法の自由度が高い(同じ粘土を好きなサイズで切断できる)」のが特長です。
例えば、1mの壁面にタイルを貼る場合、乾式成形品だと、1mの長さに対し割り切れる200mmや100mmの型の製品であれば綺麗に割付ができますが、300mmの型の製品は最後に端数や切ものが出てしまいます。一方で湿式成形の特注品なら、長さ250mのタイルを4枚並べるか、長さ200mmのタイルを5枚並べれば、綺麗に割付ができます。
反対に、湿式成形に不向きなのは、モザイクタイルのような極端に小さなサイズのタイル。は粘土を押出しピアノ線で切断して一つ一つのタイルを成形していくため、成形の効率が悪くなります。
また、伸び縮みだけでなく、反りの影響を受けるため極端に大きなサイズのタイルも苦手。「寸法や形状に不良が多くなると、当然コストにも跳ね返るし、現場での施工も大変。貼りあがりの見映えも悪くなってしまう」といいます。
乾式成形タイルは、用途に応じて様々なサイズがあります。
例えば、床材として使用されるのは100×100、300×300、300×600、600×600などのサイズ。大きなものであれば600×1200まであります。
ダイナワン社によれば、「この10年くらいで、海外では技術革新もあり、1,500×3,200のような超大型タイルも誕生し、日本でも輸入し取り扱うようになっている」とのこと。反りや収縮が小さいため、このように大きなサイズの成形も可能です。
乾式成形のモザイクタイル(DENIM BLEND)
また、インテリアで使用される小さなモザイクタイルなども、乾式成形のタイルです。乾式成形では原料を金型に充填しプレスするだけで、一度に何十ピースもの生地を効率的につくることができます。
湿式成形は金口から粘土を押出して成形するため、基本的には長方形や正方形を作るのに適しています。
一方で、粘土細工と同じ要領で、様々な形状に調整したり、細工を施すことができます。八戸市美術館の外構タイルでも、各ベンチのカーブや曲率に合うよう一つ一つ成形していました。
八戸市美術館の外構に使用した手作業成形の湿式タイル
乾式タイルは原料を金型に入れてプレスするため、型によって形状が決まってしまいます。
そのかわり、乾式成形は型さえ準備できれば、丸や三角、凸凹等、ユニークな形状を量産することが可能です。
「温もり」「温かみ」「人工的ではない自然な風合い」や「重厚感」が求められるようなシチュエーションでは、湿式成形のタイルがおすすめ。焼き物らしい色バラつき、タイル端部の歪みで、味わいやクラフト感を演出することができます。
ダイナワン社によれば、そのなかでも多いのは、外装の壁での使用です。元々、「レンガの薄いもの」のイメージで作られた湿式成形タイルは、躯体に貼りつけることで、レンガを積んだような外観を演出します。地震が多い日本ではレンガ積みは倒壊の恐れがあり、レンガを積むかわりに安全性の高いタイルが多く採用されてきたそうです。
一方で近年では、人の目線や人の手に触れる内装壁向けの湿式タイルも多くなっているといいます。
乾式成形タイルは、外・内の床、内装壁、マンションの外壁など幅広いシーンで採用されています。
釉薬を施すことの多い乾式成形のタイルは、タイル表面からの吸水も少なく、汚れに強く、清掃性もよく衛生的。外部、内部、壁、床問わず使用される使いやすいタイルです。
ダイナワン社によれば、タイルメーカーの商品ラインナップは多くが乾式成形品で、色、形状などのバリエーションも豊富。「通常は乾式タイルを提案することが多く、お客様が素材に求める役割や空間イメージに応じて湿式タイルを提案している」といいます。
CLASS1 ARCHITECT Vol.22では、湿式成形タイルを使用した「八戸市美術館」の採用事例を公開中です。
「八戸市美術館」では、焼き物特有の風合いが出る湿式成形タイルを外構のベンチに採用。採用を決めた建築家の浅子佳英氏によるレビューと、メーカーであるダイナワン社の開発秘話を無料で閲覧できます。
「窓を開けたいのに網戸が付いていない」
「外からの視線や、窓からのきつい日差しが気になる」
そのような開口部に向けて、CLASS1 SELECT (クラスワン セレクト)では防虫や遮光ができる収納式ロール網戸を販売しています。
今回は、SELECTで販売している2種類の収納式ロール網戸「ZIProll 網戸タイプ」と「Centor スクリーン&シェードシステム(以下、Centor)」を比較。それぞれの特長から、製品に合った使用シーンを紹介します。
ZIProll 網戸タイプ 採光用やトイレなどの“網戸がない窓”に 簡単後付けできるロール網戸。 |
Centor スクリーン&シェードシステム 大開口窓からの虫の侵入や、きつい日差しが気にならない。 プライバシーまで対策できる。 |
ZIProll 網戸タイプとCentorには、いくつか共通点があります。製品の違いを見る前に、まずは3つの共通点をご紹介します。
ZIProll 網戸タイプとCentorは、どちらも収納式のロール網戸。普段はフレームの中に納まり、必要なときにだけスライドして取り出すことができます。
どちらも、小さな虫を入れない網戸タイプだけでなく、調光や遮光が可能なシェードタイプも取付が可能です。
ZIProll 網戸タイプ 網戸生地 |
ZIProll 網戸タイプ シェード生地 |
Centor 網戸生地 |
Centor シェード生地 |
防虫・調光・遮光など、用途に合わせて記事を選ぶことができます。
どちらも、既存の窓にそのまま取り付けることができます。
特にZIProll 網戸タイプは、付属の両面テープを使って簡単に後付けが可能です。
「窓に網戸がないことに住み始めてから気付いた」など、居住後に気になり始めた問題にもすぐに対応できます。
次は、ZIProll 網戸タイプとCentorの特徴や仕様の違いを見ていきます。
比較項目
ZIProll 網戸タイプとCentorとの一番の違いは、製作可能なサイズです。ZIProll 網戸タイプよりも、Centorの方が大きなサイズで製作が可能です。
ZIProll 網戸タイプの製作可能サイズ | |
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高さ | 300-2000mm |
幅 | 300-1000mm |
Centor スクリーン&シェードシステムの製作可能サイズ (網戸生地・ダブルタイプの場合) |
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高さ | 815-3200mm |
幅 | 1015-9013mm |
ほぼ同じサイズの両製品について、価格を比較しました。
製品 | サイズ | 価格 |
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ZIProll 網戸タイプ (網戸生地) |
1000×2000mm | 56,700円 |
Centor スクリーン&シェードシステム (網戸生地) |
1015×2000mm | 219,523円 (本体価格) |
ほぼ同じサイズで購入をした場合、ZIProll 網戸タイプの方が4分の1程度価格が安くなります。
Centorは、サイズやバリエーションを豊富に選ぶことができる分、価格が高くなります。
また、生地やフレームのバリエーションにも違いがあります。
Centorの方が、選べる生地やフレームの種類が豊富です。
ZIProll 網戸タイプのバリエーション | |
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生地 |
|
フレーム | 白色のみ |
Centor スクリーン&シェードシステムのバリエーション | |
---|---|
生地 |
|
フレーム |
|
フレームの形状においても、Centorの自由度は高いです。Centorは4種類の形状に対応しています。
フレームの片側からスライドするシングルタイプだけでなく、フレームの両側からスライドできるタイプも選択できます。
シングル | コンボ |
ダブル | コーナーレス |
コンボタイプでは、両側からスライドできる特徴を活かして、片側は防虫スクリーン、もう片側はシェードにするなど自由な組み合わせをすることができます。
一方でZIProll 網戸タイプは、一般的なロール網戸と同じく、フレームの片側からスライドして操作します。
CentorにないZIProll 網戸タイプならではの特徴は、網戸をスライドする方向を縦と横どちらも選べることです。
引き違い窓のような大きな窓には、操作がしやすい「横引きタイプ」に、スリット窓やルーバー窓など小さな開口部には、よりコンパクトに見える「縦引きタイプ」にするなど、場所に合わせてスライド方向を変えられます。
この記事では、ZIProll 網戸タイプと、Centor スクリーン&シェードシステムの違いをご紹介しました。
ZIProll 網戸タイプが活かせる使用シーン
ZIProll 網戸タイプは、設置する向きを選ぶことができ、後付けも比較的簡単である点が特徴です。
すべり出し窓・引違い窓・開き窓などに
窓の下が床に付かない一般的な引き違い窓や、片開き窓・両開き窓・すべり出し窓のような採光用の比較的小さな窓への設置が向いています。
Centor スクリーン&シェードシステムが活かせる使用シーン
開放的な大開口に
Centor スクリーン&シェードシステムは、製作可能サイズが大きく、生地を使い分けられることが強みです。掃き出し窓のような、室内外を繋ぐ開放的な窓への設置に向いています。
「カーテンを付けたくない」「開口部をスッキリと見せたい」といった住宅デザインのニーズにも応えます。
CLASS1 SELECTでは、今回紹介したZIProll 網戸タイプとCentorを販売しています。施工事例や価格など、商品についてより詳しく知りたい方は、下のバナーから販売ページをご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.20で紹介した「ECORIAL STONE VE」は、薄いシート状になった石材です。建築家松島順潤平氏が設計した個人住宅「Triton」の外壁に使われた建材として紹介しました。
この記事では、天然石シート「ECORIAL STONE VE」と、建築で使われる主な石材である花崗岩や大理石を比較。それぞれの石材のメリット・デメリットや、特性に合った使用シーンを紹介します。
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CLASS1 ARCHITECT Vol.20で紹介した「ECORIAL STONE VE」と、建材として多く使われる花崗岩、大理石を比較します。
天然石を薄く剥がし、裏面をグラスファイバーで補強した天然石パネルです。厚さは1.5mm~3.0mmほどで、1㎡の重さは2~2.5kgと軽量。
200R程度であれば、曲面の施工も可能です。
使用している石材の種類もさまざまで、スレートやクォーツサイト(石英岩)、マーブル(大理石)など、全29種類から選ぶことができます。
花崗岩は火成岩の代表で、御影石とも呼ばれます。地下深部のマグマが冷却され固まることで生まれる石材です。
硬く、耐久性に優れているため、建築物外装に使用されることが多いです。
また、様々な仕上げ工法に対応できることも特徴のひとつ。研磨をすることで美しい輝きを放つだけでなく、ジェットバーナー仕上げなどで粗面に仕上げることもあり、仕上げによってまったく異なる表情を見せます。
堆積岩である石灰岩が、熱や圧力を受けて変性し再結晶化した石材です。鉱物が混入しているため、色彩や模様が多種多様にあるのが特徴です。
軟らかく、加工しやすい一方で、酸性雨に当たると溶けて光沢を失ってしまうため、建築の内装に使用されます。
今回は以下の5項目で、「ECORIAL STONE VE」と花崗岩、大理石を比較していきます。
花崗岩や大理石は、基本的に製品として提供されたものをそのまま使用します。
厚み20mm~30mm程度の板状で主に提供されることが多く、形状やサイズを変えるには、「大鋸」や「ダイヤモンドソー」と呼ばれる専用の機械で切断が必要になります。
ECORIAL STONE VEは、万能ばさみやジグソー・サンダーなどの電動工具で切断が可能です。
そのため、使用形状も現場で自由に変えられます。例えば、極端にエッジの効いた入隅・出隅などにも、必要な大きさにカットし施工が可能です。
花崗岩の密度は2.5~2.7g/c㎥、大理石の密度は2.4~3.2g/c㎥ほどあります。
仮に、密度が2.5g/c㎥の花崗岩を、厚さ30mmで1㎡用意した場合、重さは75kgほどになります。
ECORIAL STONE VEの1㎡の重さは、2~2.5kgです。先程例に挙げた花崗岩と比べた場合、30分の1程度の重さになります。
石材は施工前に表面仕上げが施されます。表面を砥石で細かく研磨しツヤを出す本磨き仕上げ、本磨きよりもよりマットな質感で研磨する水磨き仕上げや、石材表面に砂粒や鋼鉄粒子を叩きつけるサンドブラスト仕上げ、石材結晶の熱膨張率の違いを利用し、バーナーで熱して凹凸をつくるシェットバーナー仕上げなど、粗さや使用場所に応じて様々な仕上げを行います。
石材の中で最も多様な仕上げに対応しているのが、花崗岩です。花崗岩の場合、本磨き、水磨きのほか、サンドブラスト仕上げ、ジェットバーナー仕上げなどに対応。また、原石に衝撃を加えて割り、自然のままの表情を残す割り肌仕上げも可能です。
特に屋外の床に使用する場合は滑りにくいジェットバーナー仕上げを採用するなど、用途や空間デザインに合わせて質感を自由に変えられます。
大理石の場合は、花崗岩よりも仕上げの自由度は抑えられます。表面を研磨する磨き仕上げや、ジェットバーナーよりも凹凸の小さいサンドブラスト仕上げ、割り肌仕上げが主に採用されます。
一方でECORIAL STONE VEは、上記のような磨き、叩き仕上げには対応していません。主に天然スレートやクォーツサイトなどの積層状の石材を使用しているため、割り肌仕上げで提供されます。
石材の物性の違いによって、建築での適用部位にも違いがあります。
硬度や耐久性に優れる花崗岩は、屋内だけでなく屋外の使用にも適した石材です。屋内壁・床だけでなく、屋外の床材や外壁、笠木などに使用されます。
花崗岩よりも軟らかく、酸性雨に弱い大理石は、屋内使用が一般的です。多彩な模様と色彩を持つため、主に内部床・内部壁などの屋内装飾に向いています。
ECORIAL STONE VEは、基本的に屋内・屋外の両方で壁面使用が可能です。また、室内履き程度の摩耗であれば内装床への使用もできます。
しかし、ECORIAL STONE VEを外部に使用できる種類には限りがあります。天然スレート・クォーツサイトの積層状の石材を使用したものは外壁使用が可能で、表層にコート剤を塗布することで使用できます。一方で大理石を使用したマーブルタイプの商品は外壁使用には向かず、屋内使用が勧められています。
また、ECORIAL STONE VEは薄さと優れた加工性を活かし、R形状や柱巻きや天板材、家具の表層材にも施工できる点も特徴です。螺旋階段の外側仕上げや、ドアのパネル、椅子の張地などに使用されています。
花崗岩や大理石を壁や床に施工する場合、安全性・施工性の観点から、寸法や使用面積に制限がある場合があります。
例えば、外壁へのメジャーな施工方法である外壁乾式工法では、石材の面積は0.8㎡以下、幅と高さは1200mmまで、などと標準化されています。
また、全国建築石材工業会では、床に使用する石材の大きさについて「石裏に空洞ができる可能性を考慮し、0.4㎡程度が限度」としています。
一方でECORIAL STONE VEは、最大サイズ1200mm×600mmで提供されています。壁や床への、使用面積や高さの規定は特にありません。
「ECORIAL STONE VE」は、外装床など負担のかかる場所には使用できませんが、家具や建具の表層材・エッジの効いた隅など、今まで石材の使用が難しかった場所も天然石仕上げにできる利点があります。
CLASS1 ARCHITECT Vol.20では、建築家の松島潤平氏が「ECORIAL STONE VE」を使用した事例を無料公開しています。
個人住宅の多面的な外壁に貼って使用し、不規則な割付で独特な外観をつくりあげています。今回ご紹介した「ECORIAL STONE VE」の実際の施工事例を見てみたい方は、ぜひご覧ください。
CLASS1 ARCHITECT Vol.19で、建築家の安宅研太郎氏が使用した建材として紹介したのが「アクアレイヤー」です。
アクアレイヤーは、株式会社イゼナによる“水の袋”を施工した床暖房。水の対流と蓄熱性を利用することで常に熱を均一に分布させ、低温やけどを防ぐ新たな暖房システムです。
今回の記事では、CLASS1 ARCHITECT Vol.19の本編では紹介しきれなかった「アクアレイヤーの開発秘話」を紹介。また、従来の床暖房と比較して、強みや特徴をより詳しく解説していきます。
お話を伺ったのは…
株式会社イゼナ
前田朋子さん
CLASS1 ARCHITECT Vol.19では紹介しきれなかった「アクアレイヤーの開発秘話」を紹介します。
元々、床暖房の製造・施工などを行っていたイゼナ社。アクアレイヤー開発のきっかけは、既存の床暖房に対して多くの疑問を抱えていたことでした。
①低温やけどへの危険性
従来の床暖房(電気式床暖房)は、体温より高い温度に長時間触れ続けることで発症する「低温やけど」の危険性がありました。
実際、「座っているとお尻の下が熱くなり過ぎるため、使用を止めた」という話を何度も聞いていたといいます。
②部屋の全面に施工するのが難しい
床暖房用のシートヒーターや温水配管式などは、建物の断熱性能に関係なく、床暖房を入れたい面積に敷き詰めるのが一般的。断熱性能が高い家でも必要以上の容量のヒーターを床に敷き詰めてしまい、オーバースペックになり、電気基本料金が大きくなってしまうこともありました。
また、費用がかさむことへの不安から、部屋の全面には施工せず、必要な場所のみに設置すると、温かい床と冷たい床ができてしまい、快適な床暖房とはほど遠い状況でした。
③立ち上がりが遅い
エアコンや他の暖房器具と異なり、スイッチを入れてから立ち上がりが遅いことが床暖房の欠点だと言われていました。
このような理由により、低温やけどが気にならない、部屋全体をすぐに暖かくすることができるような、新たな床暖房の開発に踏み切りました。
そこでイゼナ社が考えたのが、水の蓄熱性を利用した床暖房。水の対流を利用すれば一定箇所に熱がこもらず、建物の断熱性能に合わせた熱源と熱量で部屋全体に設置することができる。さらに蓄熱性により部屋を暖かく保ち続けることができると考えました。
しかし、床暖房は床材の下に設置するため、基本的にはメンテナンスができません。床暖房にするためには水が水蒸気として30年以上漏れない袋が必要であると考えましたが、その条件を満たせる技術がありませんでした。
一度はアクアレイヤーの開発を諦めたイゼナ社でしたが、クライアントの紹介で29年間空気が透過しない袋を発見。早速水を入れた加速試験を行ったところ、30年変化が出ない(水蒸気が漏れない)と判断し、「アクアレイヤー床暖房」の商品化となりました。
現在の袋は改良を続けており、更に耐熱性・耐久性をアップさせています。
熱源の自由度も高まり、今では太陽エネルギーを蓄えて使う「水蓄熱アクアレイヤー」として利用方法は多岐にわたって進化しています。
こうして開発されたアクアレイヤーは、従来の床暖房と比べてどのような特徴を備えるのか。温水を細いパイプ内に循環させる温水式床暖房などと比較をしながら見ていきます。
温水式床暖房はポンプによる循環である一方で、アクアレイヤーはポンプなどの動力は使わない自然対流のため、床暖房としての仕組みは大きく異なっています。
アクアレイヤー最大の強みは、水の自然対流機能が常に熱の分布を均一にするため、特定の箇所に熱がこもらないこと。
従来の電気式・温水式床暖房等の課題であった低温やけどの問題を解決しています。
アクアレイヤーと温水式床暖房との違いに「中間期・冷房期でも使用できる」ということが挙げられます。
温水式床暖房は冬場の暖房でのみ使用されるものですが、アクアレイヤーは冷房エアコンを運転することで、床暖房だけでなく床冷房の効果を持ちます。年間を通して室内の温熱環境を安定させることができます。
また、アクアレイヤーは熱源の自由度が高いことも違いとして挙げられます。
電気式の床暖房はシートヒーター、温水式の床暖房はヒートポンプなど、他の床暖房は熱源があらかじめ決まっていますが、アクアレイヤーは温める方法(熱源)を自由に選ぶことができます。
さらに熱源はアクアレイヤー設置後も変更が可能です。温水式床暖房もボイラーとヒートポンプで変更可能ですが、アクアレイヤーはシートヒーター式、温風式、温水配管式、薪ストーブの輻射熱、太陽熱など、建物の性能や床暖房を敷く面積に合わせて熱源を選べます。
アクアレイヤーのメンテナンスは、熱源に何を選択するかによって変わります。
アクアレイヤーそのもののメンテナンスは必要ありませんが、熱源として温水配管を選択すれば、熱源のメンテナンスは温水式床暖房と同じです。
シートヒーターを用いた場合、アクアレイヤーがヒーターの熱を奪うため、一般的なヒーターで見られる熱劣化がほとんど起きずメンテナンスも不要になります。(コントローラーやリレーなどは通常の機器として寿命があります)
従来の床暖房は電気式も温水式も、その発熱部分が直接床材裏面に接触していますが、アクアレイヤーは発熱部分と床材の間に熱の緩衝材である水の層を設け、熱を間接的に床材に伝えます。
一般的な床暖房は、40℃~50℃程度の熱が床材に触れます。熱に弱い無垢フローリングなどを使うと、温度変化で反りや隙間ができてしまうことがあります。
一方でアクアレイヤーは、25℃~30℃の低い温度域で温めます。他の床暖房のように40℃以上の高い温度で温める必要がないため、そのぶん床材への負担も小さくなるため、無垢フローリングでも使用可能。床材の自由度がより高くなっています。
アクアレイヤーそのものの立ち上がりスピードは、他の床暖房と大きく変りません。(同じ蓄熱量のコンクリート埋設より立ち上がりのスピードは早い)
しかし、水の蓄熱性を利用したアクアレイヤーは、朝出かけるときにスイッチを切っても、夕方に帰ってきたときに「温かさが残っている」と感じられるほど。スイッチを切っても温かさを残すことができるため、床暖房が立ち上がるまで寒い部屋で待つ必要がなくなります。
アクアレイヤーの導入費は、一般的にイニシャルコストが安いとされている電気式床暖房よりも高くなります。
そのぶん、蓄熱力を活かして床暖房の運転時間を短くできたり、メンテナンス費が抑えられるなど、ライフサイクルコストを縮小することが可能です。
このような特徴・強みから、アクアレイヤーは病気などの理由で身体の自由がききにくい方やお年寄り、こども園などの床暖房に最適との評価を得ています。
CLASS1 ARCHITECT Vol.19では、建築家の安宅研太郎氏によるアクアレイヤーのレビューを公開。そのほか、安宅研太郎氏が「かがやきキャンプ」に使用した建材を紹介しています。
医療施設・福祉施設に携わる方は、建材選びの参考にぜひご覧ください。
工務店経営者の方、
このように思ったことはありませんか?
分譲地の縮小や新規業者の参入で競争率が激しくなる中、工務店では業務効率化や仕組み化が重要な課題になっています。同時に、そのような工務店が検討し始めるのが、日々の業務や顧客情報を記録するシステム・ソフトの見直しです。
日々抱える膨大な業務をシステム化できれば、会社全体の業務がスムーズになり、コストダウンや新規営業、新たなサービス・技術開発の時間が生まれます。
「でも、今まで長年使ってきた方法を変えるのは大変そう」
「新しいシステムにスタッフが戸惑わないか心配」という方。
実は今、同じ悩みを持つ中小工務店に選ばれているのが、工務店向け業務効率化システムの「AnyONE(エニワン)」です。「AnyONE(エニワン)は、顧客管理、見積、工程表作成、図面写真管理、アフターメンテナンス、各種帳票作成など、工務店業務のすべてに対応した業務管理ソフトです。
リリースから10年以上進化し続け、現在は導入企業2700社超、継続率が94.6%と、基幹システムとして今、多くの工務店に選ばれています。
そこで今回編集部では、「AnyONEを導入した工務店」と「AnyONEを提供する企業」の声を調査。利用者と開発者それぞれから得られた声をもとに、AnyONEが今、選ばれる理由を紹介します。
AnyONEは、顧客管理・見積・アフターフォローなど、工務店業務を一気通貫で管理することができます。
AnyONEで利用できる機能の一部を紹介します。
顧客情報を一元化して
社内で共有
基本情報だけでなく、家族や勤務先、進捗状況などの顧客情報を一括して管理。社内全体で情報を共有することで、伝達ミスや機会ロスを防ぎます。
また、商談記録や活動履歴も顧客情報と紐づけて管理。アプローチした情報を共有することで、社内全体で顧客対応の体制を整えられます。
過去の見積を活用して
新規見積作成がより効率的に
過去の見積りをベースに、スピーディーに新規見積や実行予算を作成できます。
Excelのような直感的な操作で使えるほか、Excelからのコピーや一括更新などの機能にも対応。CADや他ソフトで作成した見積りも取り込めるようになっています。
テンプレートを使って
工程表作成が簡単に
テンプレートを使って工程表をマウスひとつで作成できます。工程の移動や日付変更なども一括で移動できます。
また、同時に進行している工事を一覧にして表示できるため、現状の工事進捗を俯瞰で把握できます。外出先や現場からでも、スマートフォンでいつでも確認できます。
アフターフォローのタイミングを
アラームでお知らせ
竣工した案件のメンテナンス対応予定日や定期点検予定日をアラーム・プッシュ通知で知らせます。
そのほか、工事に関わる書類の管理・保管や、アフターフォロー対象の施主を地図上に一括表示するなど、引き渡し後の施主へのフォローに役立つ機能が備わっています。
それでは実際に、AnyONEを採用した企業の事例を紹介します。
導入企業の声からは、「見積作成の負担を軽減できた」「アフターフォローが適切な時期に行えるようになった」など、多種多様な課題に対応できることがわかります。工務店業務全体の管理ができるAnyONEの強みです。
住所 | 広島県広島市 |
従業員数 | 10名以下 |
URL | http://www.shigenari-k.com/ |
AnyONEは、取引のある建築資材販売の会社から薦められたことがきっかけでした。
その紹介で最も興味を持った点が、「AnyONEを導入すれば建材会社からの見積をデータで提供してもらえて、それが取り込める」というところでした。
ちょうどその頃、見積作成にかかる手間が大きいことで悩んでいたこともあり、導入を考えることになりました。
以前はCAD連動の見積システムを使っていましたが、実際には下請けさんから届いた見積を、ほとんど手作業で入力し直す必要がありました。
その点AnyONEは他の見積ソフトと連携できますし、特にAnyONEを使っている下請業者さんからのデータはドラッグ&ドロップで、すぐに自分のAnyONEに取り込むことができます。このお陰で、それまで見積作成にかかっていた時間を大幅に短縮することができました。
AnyONEを導入して作業の手間が減っただけでなく、社内の見積書や請求書のデータが会社全体で共有できるようになったことも大きな変化だと思います。誰でも同じフォーマットでデータを出力できますし、担当者不在でも必要な情報が取り出せるのでとても便利ですね。
住所 | 大阪府枚方市 |
従業員数 | 10名以下 |
URL | https://www.fujitakensetsu.jp/ |
アフターフォローや定期点検など、お声掛けが必要なお客様が見えづらかったんです。顧客情報はExcelで管理しており、お声掛けの必要なお客様がいないか都度チェックが必要で非常に手間でした。
AnyONEの画面を見せてもらう機会があったんですが、これならアフターフォローだけでなく、あらゆる情報を管理ができて、会社全体の業務改善に使えると感じ、導入に踏み切りました。
AnyONEでは顧客情報に紐付けて、案件ごとにアフターフォローや定期点検の設定ができます。それをプッシュ通知でお知らせしてくれるので、「気がつくと過ぎていた」といったミスの心配がなくなりました。
実際に導入し始めてから、アフターフォロー以外の機能も使い始めています。AnyONEを導入してから、見積もり専用ソフトから移行して同じソフトで管理できるようにしました。AnyONE内の顧客情報と紐付いていてまとめて管理できるのが良いですね。
あとは工程表。今まではExcelで作成していましたが、カレンダーの日付を入れて休日設定をしたりと、工程表ひとつ作るのにもとても手間と時間がかかっていました。AnyONEの工程表の機能はExcelと比べて簡単に作成ができますし、工程や日程に変更があった場合の編集も楽で、とても助かっています。
住所 | 群馬県沼田市 |
従業員数 | 約70名 |
URL | https://saito-ringyo.jp/ |
以前は営業からアフターフォローまで一括で管理するシステムがなかったので、それぞれ別のソフトで管理していました。住宅関連のセミナーでAnyONEを知り、早速デモを依頼。一元管理の利便性に惹かれて導入を決定しました。
AnyONEにより、スタッフの誰でも案件情報を確認できる環境ができたので、仕事を抱え込むことも無くなり、問い合わせに対するレスポンスも早くなりました。ひとつのシステムで入り口から出口まですべて確認できるため、重複入力もなくなりミスも減りました。
またAnyONEでは、請負金額、入金、支払といったお金の流れを確認するのがとてもわかりやすくので便利です。発注のない請求書も工事ごとに受け付けできるなど、工務店業務の細かいところまで使えるように設計しているんだなと感心しました。
ここまでは、使用者である導入企業の視点から「AnyONEが選ばれる理由」を探ってきました。ここからはAnyONEの開発者であるエニワン株式会社に、他者と比べたエニワンの利点や工夫されている点を伺っていきます。
AnyONEを採用する工務店が最も求めているのは、どの機能ですか?
AnyONEは基幹システムなので、一気通貫で機能が使えるのがもちろん特色ではあるのですが、中でも小規模な工務店は「工程表や見積作成を楽に作りたい」という方が多いです。
作成にかかる時間を短縮したり、「特定の社員にしか作成できない」部分を誰でもできるようにシステム化・標準化したりといったことがきっかけで採用いただいています。
競合の業務管理ソフトがある中で、AnyONEを選ぶ決め手はどのような理由が多いですか?
AnyONEは他の業務管理ソフトと比べると導入費が割高に見えてしまうのですが、そのような競合ソフトは現場との情報共有や見積作成など、工務店業務の一部分をカバーするシステムが多いです。
そのような中、「エニワンの方が多機能で包括してカバーできる」「競合のシステムを採用して、オプションで機能を追加するよりもお得」というところに魅力を感じていただくことが多いですね。
使用者からは、「住宅建築のことをよく理解されている」という声が上がっています。住宅建築業界に特化するために、機能にどのような工夫をしていますか?
まずはメニューの並びや用語を建築業界に特化させました。
例えば、「実行予算」や「上棟日」、「現調日」などの用語は建築業界ならではだと思います。
並びでいうと、トップ画面のメニューが「顧客」「物件」「工事」と、実際の仕事の流れに合わせて並んでいます。物件と工事が別れていることで、1つの物件の中でも新築、リフォーム、増改築など複数の工事に分けてデータが作れるようになっています。
また、業界では工程表や見積をExcelで作成される方が多いため、Excelの使い勝手をなるべく再現したり、Excelからのコピー・ペーストを可能にしたりしたのも使いやすさのポイントになっていると思います。
あとは、必須入力をなるべく少なくすることにも気を付けました。物件、工事、顧客などの基本情報を入力せずに工程表や見積を作ったり、見積なしでいきなり発注や請求書を発行できるようにしたり、通常の基幹システムでは想定されない動きも臨機応変にできるようになっています。
AnyONEでは、機能が一目でわかるパンフレットや、約20社の導入事例集がひとつになった無料パンフレットを申し込めます。
今回一部しかご紹介できなかった「顧客管理」「見積作成」「施工管理」「アフター管理」の各機能についてより詳しく知りたい方は、ぜひ資料をお申込みください。
〒541-0052
大阪府大阪市中央区安土町1-6-14-5階
TEL:06-6265-2311
WEB:https://www.any-one.jp/company