石なのに、曲面や家具に施工できる。天然石シート「ECORIAL STONE VE」の使い方が比較でわかる
CLASS1 ARCHITECT Vol.20で紹介した「ECORIAL STONE VE」は、薄いシート状になった石材です。建築家松島順潤平氏が設計した個人住宅「Triton」の外壁に使われた建材として紹介しました。
この記事では、天然石シート「ECORIAL STONE VE」と、建築で使われる主な石材である花崗岩や大理石を比較。それぞれの石材のメリット・デメリットや、特性に合った使用シーンを紹介します。
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比較する3つの石材の特徴
CLASS1 ARCHITECT Vol.20で紹介した「ECORIAL STONE VE」と、建材として多く使われる花崗岩、大理石を比較します。
ECORIAL STONE VEとは
天然石を薄く剥がし、裏面をグラスファイバーで補強した天然石パネルです。厚さは1.5mm~3.0mmほどで、1㎡の重さは2~2.5kgと軽量。
200R程度であれば、曲面の施工も可能です。
使用している石材の種類もさまざまで、スレートやクォーツサイト(石英岩)、マーブル(大理石)など、全29種類から選ぶことができます。
花崗岩とは
花崗岩は火成岩の代表で、御影石とも呼ばれます。地下深部のマグマが冷却され固まることで生まれる石材です。
硬く、耐久性に優れているため、建築物外装に使用されることが多いです。
また、様々な仕上げ工法に対応できることも特徴のひとつ。研磨をすることで美しい輝きを放つだけでなく、ジェットバーナー仕上げなどで粗面に仕上げることもあり、仕上げによってまったく異なる表情を見せます。
大理石とは
堆積岩である石灰岩が、熱や圧力を受けて変性し再結晶化した石材です。鉱物が混入しているため、色彩や模様が多種多様にあるのが特徴です。
軟らかく、加工しやすい一方で、酸性雨に当たると溶けて光沢を失ってしまうため、建築の内装に使用されます。
「ECORIAL STONE VE」と建築用石材を比較
今回は以下の5項目で、「ECORIAL STONE VE」と花崗岩、大理石を比較していきます。
- 加工性
- 重さ
- 仕上げ
- 適用部位・採用場所
- 施工可能なサイズ
加工性
花崗岩や大理石は、基本的に製品として提供されたものをそのまま使用します。
厚み20mm~30mm程度の板状で主に提供されることが多く、形状やサイズを変えるには、「大鋸」や「ダイヤモンドソー」と呼ばれる専用の機械で切断が必要になります。
ECORIAL STONE VEは、万能ばさみやジグソー・サンダーなどの電動工具で切断が可能です。
そのため、使用形状も現場で自由に変えられます。例えば、極端にエッジの効いた入隅・出隅などにも、必要な大きさにカットし施工が可能です。
重さ
花崗岩の密度は2.5~2.7g/c㎥、大理石の密度は2.4~3.2g/c㎥ほどあります。
仮に、密度が2.5g/c㎥の花崗岩を、厚さ30mmで1㎡用意した場合、重さは75kgほどになります。
ECORIAL STONE VEの1㎡の重さは、2~2.5kgです。先程例に挙げた花崗岩と比べた場合、30分の1程度の重さになります。
仕上げ
石材は施工前に表面仕上げが施されます。表面を砥石で細かく研磨しツヤを出す本磨き仕上げ、本磨きよりもよりマットな質感で研磨する水磨き仕上げや、石材表面に砂粒や鋼鉄粒子を叩きつけるサンドブラスト仕上げ、石材結晶の熱膨張率の違いを利用し、バーナーで熱して凹凸をつくるシェットバーナー仕上げなど、粗さや使用場所に応じて様々な仕上げを行います。
石材の中で最も多様な仕上げに対応しているのが、花崗岩です。花崗岩の場合、本磨き、水磨きのほか、サンドブラスト仕上げ、ジェットバーナー仕上げなどに対応。また、原石に衝撃を加えて割り、自然のままの表情を残す割り肌仕上げも可能です。
特に屋外の床に使用する場合は滑りにくいジェットバーナー仕上げを採用するなど、用途や空間デザインに合わせて質感を自由に変えられます。
大理石の場合は、花崗岩よりも仕上げの自由度は抑えられます。表面を研磨する磨き仕上げや、ジェットバーナーよりも凹凸の小さいサンドブラスト仕上げ、割り肌仕上げが主に採用されます。
一方でECORIAL STONE VEは、上記のような磨き、叩き仕上げには対応していません。主に天然スレートやクォーツサイトなどの積層状の石材を使用しているため、割り肌仕上げで提供されます。
適用部位・採用場所
石材の物性の違いによって、建築での適用部位にも違いがあります。
硬度や耐久性に優れる花崗岩は、屋内だけでなく屋外の使用にも適した石材です。屋内壁・床だけでなく、屋外の床材や外壁、笠木などに使用されます。
花崗岩よりも軟らかく、酸性雨に弱い大理石は、屋内使用が一般的です。多彩な模様と色彩を持つため、主に内部床・内部壁などの屋内装飾に向いています。
ECORIAL STONE VEは、基本的に屋内・屋外の両方で壁面使用が可能です。また、室内履き程度の摩耗であれば内装床への使用もできます。
しかし、ECORIAL STONE VEを外部に使用できる種類には限りがあります。天然スレート・クォーツサイトの積層状の石材を使用したものは外壁使用が可能で、表層にコート剤を塗布することで使用できます。一方で大理石を使用したマーブルタイプの商品は外壁使用には向かず、屋内使用が勧められています。
また、ECORIAL STONE VEは薄さと優れた加工性を活かし、R形状や柱巻きや天板材、家具の表層材にも施工できる点も特徴です。螺旋階段の外側仕上げや、ドアのパネル、椅子の張地などに使用されています。
施工可能なサイズ
花崗岩や大理石を壁や床に施工する場合、安全性・施工性の観点から、寸法や使用面積に制限がある場合があります。
例えば、外壁へのメジャーな施工方法である外壁乾式工法では、石材の面積は0.8㎡以下、幅と高さは1200mmまで、などと標準化されています。
また、全国建築石材工業会では、床に使用する石材の大きさについて「石裏に空洞ができる可能性を考慮し、0.4㎡程度が限度」としています。
一方でECORIAL STONE VEは、最大サイズ1200mm×600mmで提供されています。壁や床への、使用面積や高さの規定は特にありません。
「ECORIAL STONE VE」で、意外な場所も石材調に
「ECORIAL STONE VE」は、外装床など負担のかかる場所には使用できませんが、家具や建具の表層材・エッジの効いた隅など、今まで石材の使用が難しかった場所も天然石仕上げにできる利点があります。
CLASS1 ARCHITECT Vol.20では、建築家の松島潤平氏が「ECORIAL STONE VE」を使用した事例を無料公開しています。
個人住宅の多面的な外壁に貼って使用し、不規則な割付で独特な外観をつくりあげています。今回ご紹介した「ECORIAL STONE VE」の実際の施工事例を見てみたい方は、ぜひご覧ください。
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