表面を炭化させて耐久性を上げる「焼杉板」:焼き方による特徴の違いを比較
CLASS1 ARCHITECT Vol.12で建築家の島田陽氏が紹介したのが、シンリン共同株式会社の「焼杉板」です。島田氏の友人の住居である「高槻の住居」設計時に使用し、「今までで最も思い出深い建材」と語りました。
「焼杉板」は焼くことで耐久性を高めた杉板ですが、その「焼き方」もメーカーによって様々。今回は、焼杉板の焼き方が異なるふたつのメーカーを比較し、焼き方の違いによってどのような特徴が生まれるのか、見ていきます。
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焼杉板とは?
焼杉板は、杉板の表面を焼いてつくった木板。主に外壁用の板として使用されます。
杉板の表面に炭化層をつくることで、耐候性・耐久性が上がるほか、腐食や虫食いに強い木板になります。
メンテナンス費を抑えられるほか、炭の落ち着いた色合い・表面の凹凸が醸し出す意匠面も魅力です。
そして、焼杉板の焼き方には主にふたつの方法があります。ひとつは、日本の伝統的な作り方の「三角焼き」。もうひとつはバーナーを使って炭化させる「バーナー焼き」です。
「三角焼き」と「バーナー焼き」の違い
厚みのある炭化層をつくる「三角焼き」
三角焼きは、杉板3枚を三角柱状に固定して表面を焼く、日本の伝統的な焼杉方法です。
時間がかかる分、表面に“厚い炭化層”をつくることが可能。固く剥がれにくい炭化層があることで、バーナー焼きの焼杉板よりも耐久性が上がります。
三角焼きを採用する「株式会社fan material」
株式会社fan materialの「天龍焼杉」は、この三角焼きの方法でつくられた焼杉板です。
天龍焼杉・平板
天龍焼杉・押え縁
天龍焼杉は、一般的な焼杉用板よりも厚い18mmの杉板でつくられます。そのため、耐久性が高いだけでなく反りや割れが少ない焼杉板ができます。
施工時は、焼杉板のつなぎ目に打つ「押え縁」の使用を推奨しています。
商品名 | 参考価格 |
---|---|
天龍焼杉・平板 | 18mm × 225mm × 3000mm 4,800円(税別・送料別) |
天龍焼杉・押え縁 | 18mm × 45mm × 3000mm 1,300円(税別・送料別) |
加工がしやすい「バーナー焼き」
杉板の表面をバーナーで焼く方法です。三角焼きに比べて弱い火力で炙るため、三角焼きよりも炭化層が薄くなります。
その分施工性・加工性に優れており、三角焼きでは難しい様々な加工が可能です。
バーナー焼きを採用する「シンリン共同株式会社」
CLASS1 ARCHITECT Vol.12でも紹介したシンリン共同株式会社の焼杉板は、バーナー焼きで焼杉板を製作しています。
磨き
炭付
浮造り
シンリン共同株式会社の焼杉板では、杉板をバーナーで焼いた「炭付」だけでなく、表面をブラッシングした「磨き」仕上げや、木目を浮き上がらせる「浮造り」仕上げなど様々なパターンに仕上げられます。
一般的に焼杉板といえば外壁・塀など外装としての使用がメインですが、シンリン共同株式会社では、炭の微粉を落としたり表面を塗装したりできるため、内壁や天井材など内装への使用も可能です。
また、製造された段階で板の側面に凹凸の加工(サネ加工)が施されています。これにより、三角焼きのように目地に押え縁をする必要がなく、加工形状に沿って貼り上げていくだけで施工できるようになっています。
商品名 | 参考価格 |
---|---|
磨き/炭付/浮造り | 1970mm × 10mm × 135mm 12枚 5,600円(税別) |
求める性能に合わせて、焼杉板を使い分けられる
今回は焼杉板の焼き方による特徴の違いを、メーカーと合わせてご紹介しました。特徴やメリットの違いを知っていれば、耐久性を求める場合は三角焼き、施工性や使いやすさを求める場合はバーナー焼きにするなど、用途や目的に合わせて使い分けることができます。
CLASS1 ARCHITECT Vol.12では、今回ご紹介したシンリン共同株式会社の焼杉板を、建築家 島田陽氏のレビューと合わせて紹介しています。
自然素材ならではの不均質さを求める方、窯業や金属系とは違った仕上げ材を使ってみたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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