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間違いだらけの断熱材施工 グラスウール編

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グラスウールは安価な事もあり多くの現場で採用されている断熱材ですが正しい施工方法を知らずに取り扱っている現場をよく見ます。この記事は問題のある施工例をご覧いただきながら正しい施工方法を理解していただくきっかけになればと思い書かせていただきます。

グラスウールの基礎知識

グラスウールでの断熱の仕組みと空気の関係

グラスウールと呼ばれる非常に細くて綿のようなフワフワとした材料が沢山の空気を含んで断熱する仕組みですが、この空気が少なくても多くても能力は落ちてしまいます。

他の多くの断熱材同様、空気を中に捕らえて動けなくしてその空気をバリヤーとして熱を伝えにくくする仕組みですので、そもそも空気が少ないと断熱する能力が落ちます。逆に空気が多く含まれすぎる、つまり隙間が空きすぎると空気はその中で自由に動けるので対流という現象が起きてしまい熱を伝えてしまいます。つまり空気はたっぷり含んでいるけど自由には動けないほど周りをグラスウールで覆われている状態が理想的です。

断熱材製品搬入時

この理想的な状態というのは製品が現場に出荷されてきた時の状態ですので、このフカフカした状態を維持しないと断熱効果が低下しますので重いものを載せたり圧力をかけるような保存方法は避けないといけません。同様に施工時に無理やり押し込んだり、手で引っ張って伸ばしたりしても能力低下します。

防湿層との組み合わせてその効果が維持できる

断熱材はビニール(防湿カバー)で覆われている製品と、露出している製品がありますが、露出している製品を使う場合は別途防湿シートを室内側に施工しなくてはいけません。これを怠ると水分がグラスウール内に侵入し時間と共にグラスウール同士がくっつきあい最後にはフカフカの状態ではなくミイラみたいな状態になります。古い家などのリフォームで壁を壊すと時々グラスウールが出てくることがありますが、この防湿カバーが破れているものは痩せている事が多いです。この事からも、防湿が非常に重要だといえます。

実例で見るグラスウール施工

合格点の施工例

正しい施工例

上の写真が正しい施工例として選んだ写真ですが実は100点満点で90点くらいです。

この当時はテープで通気止めしていたのでこのように端のビニールが幾らか中に入っていてもOKとしてました。最近は製品に耳があるのでそれを出してテープは省略してそのまま壁を閉じる方式なので端部(耳)は外に出さないとダメです。

最新の写真をと思いましたが、ここ最近は皆さん正しい施工をマスターされていて問題も出ていなかったので写真を撮っていなくて実例が手元に無いことに気づきました。 問題があると写真に残す癖があるのですが問題が無いとそのまま問題個所を探しに次に進んでしまうので記録が無いので今後は意識して正しい例も残すように心がけます。

非常に問題が多い施工例

非常に問題が多い施工例

これは今から10年ほど前の現場写真です。この当時は断熱というものがあまり現場で理解されておらず現場に行くとこのような光景を目にする毎日でした。流石に現在はここまでひどい例は見なくなりましたが、断熱の意味が理解されていないとこのような施工になります。このように「とりあえず入れてみました」みたいな施工では至る所から空気が漏れたり対流したりしますので断熱力は非常に低くなります。

隙間が空いてしまっている例その1

これは遠くから見ると合格レベルに見えますが近くで見るとこのように隙間があるので不合格と言う例です。

断熱の仕組みが理解できない施工者さんには「防水」に例えてご説明しています。「全体的にカバーしていても一部に穴があるとそこから雨漏りしますよね?熱も同じなんです」という風に説明すると分かっていただけます。ただし雨漏りと違い、熱の漏れは引っ越し後にお客様が殆ど気が付かれないのが問題で、壁に跡が付いたりもしませんし、室内が汚れたりもしません。つまり問題が起きていても目に見えないので厄介です。ただし見過ごせば部屋が設計で想定しているよりも不快な空間になったり、光熱費の請求書が高くなったりするのですが、この事と断熱材の施工ミスを関連付けられない方が多いので問題が表面化しにくいといえます。

かまぼこみたいに丸くなっている失敗例

これも遠くからだと綺麗に入っているように見えますが、大きすぎる断熱材を無理に入れたことにより丸まってしまっている例で、最も出っ張っている場所(真ん中)の後ろ側は空洞になっています。このような場合は一度抜き取って少し小さく切ってから入れると正しい施工になります。

良く見ると上が入っていない施工例

これは遠くからだけではなく近くからでも合格に見えますがよく見ると重力でグラスウールが下がってしまい上のほうは空洞になっています。時間の経過とともに多少このようになるのは仕方ないですが、施工直後に既に下がっているのは不合格としてやり直していただく必要があります。

さてここまでは注意して施工してもらえば全て合格レベルに出来る施工例でしたが、更に細かな部分にも目を向けてみましょう。以下の例は納期に追われて必死に施工されている方々にここまで細かい事をお願いするのは中々難しいという細かな部分ですが、これを見逃すと断熱性能が落ちてしまうので注意が必要な部分に関してです。

できる限り丁寧な対応が望まれる施工例

余りものを詰め込んだ失敗例

どうしても小さな隙間などは切れ端などを詰め込んだりして埋められてしまう事が多いです。 隙間が小さい場合は大丈夫と判断してしまい空のまま壁を閉じる業者さんも居られるので、このように詰めていただいていれば無いよりはマシですが、このままでは時間の問題で肉痩せしてミイラみたいになるので正しく施工しなおすことが重要です。 現在は多くの施工者さんが知識を得て正しい施工をしてくださるようになりましたが10年前はここまで細かい事を言うと怒られるような時代でしたので、お施主さんと現場監督さんの許可をいただいて自分で直していました。

正しい施工例

このように正しい大きさや形にグラスウールを切り取ってはめ込み、その上から防湿シートをテープで貼り付けて密閉状態にしています。 ちなみに写真は震災直後の時期に撮影したものですが、この頃から徐々にエコに対する意識が高まり改善され始めたと記憶しています。

コンセント周りの処理の例

コンセントボックスやエアコンのダクトなど壁に穴があき何かが貫通する場合は非常に厄介です。これらはそのまま放置して壁を閉じてしまうのが一般的かもしれませんが、そうすればそこから隙間風が入り込むのでこれが寝室であれば真冬の夜間など隙間風が出て寒くなります。

テープで密閉すれば隙間風が起きません

ですので写真のように透明テープでシートとコンセントボックスを密閉し、その周りをガムテープで補強してこの上から合板や石膏ボードで壁を閉じれば安心です。
※同じ場所の写真が無かったので別の場所になります。

グラスウール施工まとめ

壁を閉じてしまえば見えなくなるのが断熱材ですが、外からは綺麗に見える壁でも中が正しく施工されていないと「冬場になんか寒い」とか「壁の近くに行くとひんやりして体の熱が奪われる」みたいな現象を経験する事になります。また断熱は冬のイメージを持たれやすいですが、夏の快適さも断熱と無関係ではありません。

グラスウールは安価ですが正しく施工すれば十分な性能を発揮する非常に使いやすい断熱材です。安いからダメとか性能が低いとか言われることもあるようですが、正しい施工・丁寧な施工をすれば十分な結果を得られますので少しでも多くの方々に防湿通気止めの重要性をご理解いただき快適な空間が作られるようになればと願っています。 日本は地震が多く雨もよく降るので耐震技術と防水技術は長年改良を重ね世界トップクラスを維持しています。近い将来、断熱技術でもそのようになるといいなぁと思います。

参考 : チクチクしないグラスウールがある

施工時の”チクチク”に悩まされる方も多いのではないでしょうか?

チクチクしないグラスウールも紹介していますので、こちらもご覧ください。特に施工する方におすすめの内容です。

建材ダイジェスト 編集部

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