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縁の下の、さらに下の力持ち。水道管の過去と現在を調べてみました。

コンクリート水道管

こんにちは。犬と本気でケンカをする男、Mr.Tボーンです。今年9月12日、東京都足立区で、洗浄処理した下水が水道に流れ込むトラブルが報道されました。

▼三次処理水配管と水道の給水管との誤接続について | 東京都下水道局
http://www.gesui.metro.tokyo.jp/news/2017/0912_2669.html

私たちが普段当たり前に使っている水道ですが、管理ミスひとつでたちまち「当たり前」ではなくなってしまいます。今回は、地中で人知れず私たちを支えてくれている水道管に光を当てます。

身近で必需品。だけどよく知らない水道管

水道管について、どれくらい知っていますか? 私もよく分かりませんでした。しかし生活を支えてくれているものに無知なのは、建材ライターとしていけません。そこで水道管について調べてみました。

そもそも水道管って建材なの?

・・・・・・という疑問を持たれる方もいるでしょう。結論から書けば、建材と考えて差し支えありません。

水道管には木材やコンクリート、金属などの建材が使われています。そして水道管は、住まい(建築)に欠かせない要素です。またノーマン・デヴィー著『建築材料の歴史』という本には、水道管についての記述があります。これらのことから、水道管を建材の1つと考えて良いでしょう。

水道管の思い出

皆様は、水道管にどんな思い出を持っていますか? と聞かれても困りますよね。でも私は水道管について、記憶に残る出来事が2つあります。

砂場の水道管

1つは小学校低学年の頃。私は公園の砂場をひたすら掘ったことがあります。ずっと掘っていったら何かあるかな。そう思ってスコップでザクザク砂をまき散らしていきました。

しばらく掘ると、何か固い物に当たりました。ねずみ色のパイプ、水道管です。当時はそれが何か分からず、すぐに飽きて埋め戻しました。

発掘現場の暗渠

2つめは私が遺跡発掘のアルバイトをしていたときのこと。発掘作業は地面の表面を削りながら、遺物を見つけていきます。その地面で、周囲と明らかに土の色が違う部分がありました。

黄色い地面に、暗い赤茶色の直線が走っています。赤茶色の土は周囲よりも柔らかく、ボロボロと崩れました。先輩作業員が、この赤茶色の線は暗渠(あんきょ)の跡だと説明してくれました。

暗渠を通る水道管
※画像はイメージです。

暗渠とは、地下に設けられた水路のことです。写真のように小さいものから、人が通れるほど大きな場所もあります。私たちの見えないところで、水道管は活躍しているのですね。

老朽化する水道管

現在、日本全国の水道管で老朽化が進んでいます。それらを直そうにも、予算と人手が足りない状態が続いているようです。

▼水道管 : 老朽化が進行 1割以上が「期限切れ」- 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20151231/k00/00m/040/126000c

総延長の1割以上が法廷耐用年数の40年を超えており、約30年後には5割を超える予想です。各地で水道管の破損や水漏れのトラブルも起きています。

全ての人々にとって他人事ではない水道管。これがどのように開発・整備されていったのか、その歴史を辿ってみましょう。

水道管の歴史

水道は集団生活のマストアイテム

想像してごらん、水道が無い世界を。(ジョン・レノン風)

例えば大災害が起きて、水も食料も家もインフラも、全てが無くなった状態を想像してみましょう。まず必要となるものは何でしょうか。

それは、とにもかくにも水です。飲み水の確保と排水処理。この2つが、生活を始める上で必要不可欠な要素になります。そのため人間が集団生活をするようになってから、給水と排水が大きなテーマとなっていました。

古代の水道

始めは湖や川から容器に入れて運んでいました。そこから水を引くことを思いつき、開渠(かいきょ)が作られました。開渠とは暗渠の対となる言葉で、開放された水路のことです。

田んぼの用水路
田んぼの用水路も開渠の1つですね。

紀元前3000年頃、メソポタミアのアカディアン宮殿では、石やレンガ、タイルなどが敷き詰められた開渠が使われていました。しかし開渠は家畜の糞や空中のごみが入り、汚染されやすいです。そのため石やレンガの屋根を取り付けるところもありました。暗渠の原型ですね。同じ頃、ギリシャのクレタ島にあるクノッソス宮殿では、陶製の水道管が使われました。

また古代ローマにおいては、コンクリートや鉛、木材など、様々な素材が水道管に使われました。『テルマエ・ロマエ』を読むと、ローマ人の水道に対するこだわりが分かりますね。ローマのコロッセオでは模擬海戦が行われていたと言いますから、当時の水道技術は驚くべきものだったようです。

鋳鉄管の広まり

水道管の素材は、18世紀までは上記のコンクリートや鉛、木材が多く使われていました。しかし19世紀になると鋳鉄管(ちゅうてつかん)が普及します。鋳鉄管はその名の通り、鉄などの金属でできた水道管です。

日本では明治26年(1893)頃、鋳鉄管が製造されるようになりました。そして昭和29年(1954)にはダクタイル鋳鉄管という、従来よりも大幅に強度を上げた鋳鉄管が造られるようになりました。これが今日までの水道管として長く使われるようになります。

水道管の工夫いろいろ

積層された鋳鉄管

表面塗装でサビを防ごう!

鋳鉄管は衝撃に強く、高い耐震性を持っていました。しかし金属には錆びやすいという弱点があります。蛇口から赤い水が出てきたら、水道管が錆びている証拠。交換しなければいけません。

そこで金属の腐食を防ぐために、菅の内面を塗装する技術が生まれました。

モルタルライニング

管内にモルタルを投入して、防サビ効果と補強効果を付与する方法です。鋳鉄管を高速回転させて流し込んだり、特殊なスピンナーを使ったりして塗装します。

エポキシ樹脂粉体塗装

エポキシ樹脂という有機化合物があります。これを基材として硬化剤や顔料を加えた粉末が、エポキシ樹脂粉体です。密着する力が強く、揮発成分や水に溶ける成分を含まないので、様々な製品の保護材として使われています。水道管のみならず、飲料水が入った缶の内側や家電製品にも塗られています。

サビの防止、衝撃に対する耐久性、水を通さない性質など優れた機能を持っていることから、様々な工業の現場で使われています。

 現在主流の水道管

長らく使われてきたダクタイル鋳鉄管ですが、近年は新しく敷設されることは少ないようです。代わって主流になってきたのが、「HIVP管」「ポリエチレン菅」などのプラスチック水道管です。

プラスチックは鋳鉄管の弱点だった「錆びる」ということがありません。また加工も簡単なので、現在は水道管のスタンダードになっているようです。

私たちの見えないところで進化を重ねてきた水道管。蛇口をひねれば水が出るということを、当たり前にしてはいけないと感じました。これからも私たちの暮らしを支える建材たちを、どんどん紹介していきます!

参考一覧

建材ダイジェスト 編集部

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