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照度差で景色が変わるハーフミラー。著名建築家に選ばれる理由を比較で解明。

CLASS1 ARCHITECT Vol.17で、建築家の増田信吾+大坪克亘が「Aesop日比谷シャンテ」の内装に使用した建材として紹介したマジックミラー。「像を反射する」と同時に「光を透過する」特性を持った、鏡とガラスの両方の性質を備えた建材です。

実は、マジックミラーは使い方や使用場所によって「ハーフミラー」や「熱線反射ガラス」などと呼ばれており、さまざまな建築に採用されています。

そこで、ここでは建材としてのハーフミラー(マジックミラー)の魅力を、鏡やガラスと比較しながら紹介します。

ハーフミラーとは

ハーフミラーとは、透明な板ガラスの片面に高い反射率の金属膜を塗布したもの。金属膜は8%~30%ほどの光透過率になるように薄く塗ります。

ハーフミラー越しにものを見ると、暗い場所から明るい場所を見たときはよく見えます。一方で、明るい場所から暗い場所を見たときは、鏡のように反射して見えにくくなります。

また、金属膜が塗布されていることによって、日射を反射する(熱線反射)効果も備えています。外壁面に使用することにより冷房負荷を軽減することができます。

使用目的によって透過率や呼び方が異なる

ハーフミラーは、「マジックミラー」の他に「ガラスミラー」や「プライバシーガラス」、「熱線反射ガラス」とも呼ばれています。

特に、照度差による反射・透過の演出を見せるために利用している場合は「マジックミラー」と呼ばれることが多く、より反射率が高く透過率が低いものが採用されています。

一方、日射を反射するために外窓などに利用している場合は「熱線反射ガラス」と呼ばれます。この場合は、より外窓の使用に適するよう、反射率を抑え透過率を大きくしたものが使われることが多いです。

ハーフミラーの特徴

ここからは、一般的な鏡やガラスとハーフミラーを比較。建材としてのハーフミラーにどのような魅力があるのか、紹介します。

①透過する

ハーフミラーは、反射と透過の両方の性質を利用した演出をすることができます。

通常の鏡は反射率が93%ほどあり、ほぼすべての光を反射します。鏡の向こうの景色が見えることはありません。

一方でハーフミラーは金属膜を薄く塗っているぶん、鏡よりも反射率が小さくなります。可視光反射率は50%以下に抑えているものがほとんどです。それにより、入射する光量の差で反射・透過が変化。ハーフミラーを利用した扉や窓は、季節や時間帯によって異なる表情を見せてくれます

例1 九州国立博物館

九州国立博物館は、菊竹清訓建築設計事務所と久米設計が共同で設計した国立博物館です。博物館の壁面はガラスで覆われており、そのガラスとしてハーフミラー(ミラーガラス)が使用されています。

引用:アソビュー!

昼間はガラスの高い反射性によって、博物館周辺の景色と一体化。ところが夜になると、外よりも照度が高い美術館内が透過して見えるようになります。博物館内部の構造をショーケースのように見せ、存在感を高めます。

例2 Aesop日比谷シャンテ

CLASS1 ARCHITECT Vol.17にも掲載したAesop日比谷シャンテでは、店舗入口の大きな扉にハーフミラーが使われています。

開店時にはハーフミラーの扉が開いていきます。照度の高い店内側から見ると、ハーフミラーが外のプロムナードの緑を反射。一気に「別の場所に来た」と認識させ、店舗の世界観をつくりあげています。扉を開いた裏側はバックヤードとなっており、バックヤードからは入店客の様子を見ることができます。

また、ハーフミラーの裏側にパンチング加工をした銅板を貼り付けているのもポイントです。店舗閉店時に扉が閉まると、ハーフミラーが透過して店内を見せると同時に、裏側のパンチング板がはっきりと見えます。昼間でも光の加減により、反射面からパンチング板がうっすらと見えることもあります。

②日射熱を反射する

ハーフミラーはガラスと同様に、サッシなどに嵌めて建築の外壁に利用することができます。このように使用されるハーフミラーは「熱線反射ガラス」と呼ばれることが多いです。

しかし、金属膜が塗られた熱線反射ガラスは一般的な透明ガラスとは違い、像の反射だけでなく「日射エネルギーも反射する」という機能を持ちます。

フロート板ガラス 型板ガラス 熱線反射ガラス
(スカイクール/シルバー系)
日射侵入率η 0.84 0.84 0.21

参考:ガラスの建築学 光と熱と快適環境の知識(日本建築学会)

同じ厚み6mmのフロート板ガラスと型板ガラス、熱線反射ガラスを比較しました。型板ガラスはざらざらとした表面で光を拡散できるガラスですが、日射侵入率はフロート板ガラスと同じ0.84。一方で熱線反射ガラスは、日射侵入率がフロート板ガラスや型板ガラスの1/4まで抑えられます。日射エネルギーの反射により、夏場の空調コスト軽減につながります。

複層ガラス加工も可能

さらに熱線反射ガラスは、複層ガラスに加工することも可能。複層ガラスにすることで断熱性能を高め、夏場だけでなく冬場の寒さ対策もできます。

先程の九州国立博物館も、ダブルスキンの外側は熱線反射ガラス+空気層+透明ガラスの複層ガラスになっています。

複層ガラス加工の熱線反射ガラスを使用し、さらにダブルスキン構造にすることにより、ガラス面の熱貫流率は1.16W/㎡・K遮蔽係数(※)は17%にまで抑えられています。

※厚さ3mmのフロート板ガラスの日射熱取得量を1とした場合の日射取得量の相対値

参考:ガラス建築 意匠と機能の知識(日本建築学会)

著名建築家によるハーフミラーの活用例を公開中

ハーフミラーは、通常の鏡にはない「透過する」性能と、通常のガラスにはない「熱を反射する」性能を併せ持つ建材。演出的かつ機能的である面が注目され、著名建築家によって活かされていました。

CLASS1 ARCHITECT Vol.17では、建築家の増田信吾氏+大坪克亘氏がハーフミラーを使用した事例を紹介。ボディケアブランドショップ Aesop日比谷シャンテの店舗入口の扉に使用したレビューを無料で読むことができます。

建築にハーフミラーをご検討の方は、ぜひご覧ください。

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建材ダイジェスト 編集部

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