無垢材を構造材にするのは難しくない!?山長商店の紀州材JAS製品
食べる物はなるべく国産を選ぶ、という家庭は少なくないですが、住宅で使われる建材を国産にこだわっている…というのはあまり聞いたことがありません。国産材はこれまで様々な事情で普及してこなかったのですが、住宅建材でも食べ物と同様に国産という選択肢があってもいいのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは木材の産地では日本一として知られる、和歌山県の紀伊半島で伐採された木材を使った、株式会社山長商店(和歌山県田辺市)さんの無垢の構造材です。
ただの無垢材を構造材にするのは難しい
建物が完成してしまえばほとんどが見えなくなってしまうのが構造材であり、意識が向きにくい部分です。しかし『構造材にも「国産」の「無垢材」を使いたい!』と思う人は多くいるはずです。ところが「無垢材」はフローリングなどの内装材では珍しくありませんが、構造材としては集成材が一般的で、無垢材が使われる事はほとんどありません。
無垢材は節がある場所で強度が落ちたり湿度の変化によって反ってしまったりと、木材によって性質が異なり強度も安定しません。その点集成材は板状にした木材を何枚か接着しているため、それぞれの板がお互いに補強し合い、反りや狂いの少ない安定した木材となっています。
昔は目利きのできる熟練の職人が無垢材の性質を見極めて悪い木材を排除したり 柱・梁に適した木材を選んだりと、無垢材でも狂いが少なく安定した建物を造ることができていました。しかし現在では工期や大量生産の視点から特別な技術を持った職人がいなくても建築できる集成材の方が必要とされ、目利きのできる職人も減ってしまいました。無垢の構造材を扱える職人が少ないため、ニーズはあってもあまり普及していないのが現状です。
無垢でも強度を明確にすることで安心の構造材に
集成材と比べて強度や安定性に不安のある無垢の構造材ですが、山長商店ではこれまで表示する必要のなかった木材の性能をあえて検査・表示することで、この不安を払拭しています。木材1本1本に対して強度と含水率の検査を行い、更にJAS(日本農林規格)の認定を受けています。集成材の場合はJAS認定を受けた構造材が使われますので、同じように認定を受けることで性能が劣らない、ということを示しています。
さらに山長商店は創業300年の歴史をもち、無垢材の目利きができる職人も多く抱えています。職人が検査を通過した木材の性質を見極め、更に適した部分に使われるよう選別します。これらの職人がいることで、無垢材を最大限に活かした家づくりが可能になるのです。
独自の乾燥技術で安定した品質を実現
丸太から切り出した木材は乾燥させることで変形の少ない安定したものになるのですが、この乾燥というのがとても大きな課題になりました。木材は100~110度の温度で、10日で乾燥させるのが採算上はベストです。しかしこの温度では高すぎて、表面が焦げて炭のような状態になってしまいます。そうなると木材の中心まで乾かすことができません。逆に温度を下げると1ヶ月以上かかってしまい、今度は採算がとれなくなってしまいます。
そこで独自に開発したのが上部に煙突がついた窯です。煙突から窯内の空気を抜くことで内部の気圧を下げ、山の頂上にいるような状態をつくります。富士山の頂上では気圧が低いため、水の沸騰する温度が約80度になります。この窯では更に70度で水が沸騰する気圧にまで下げることで、窯内の温度が低くても木材を早く乾燥させることができます。
国産の構造材、普及に期待
山長商店は日本では大変珍しく自社で植林から製材・販売を行っている会社です。植林から伐採できるようになるまでには当然、70~100年の歳月が必要です。今、伐採・製材している木がそれだけの年月をかけ、やっとのことで完成したものだと思うとより愛着も湧きます。
無垢材の良さは木の見た目だけでなく、人々の思いや歴史を感じられるところにもあります。性能を明確にし、職人の技で無垢材のデメリットを解消したこの建材で今後、国産の構造材の普及が進むことに期待します。
この建材のポイント
オススメなのは? | 国産の材料で家を建築したい施主 |
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一番の強みは? | 紀伊半島の美しい無垢材 |
施工の強みは? | 強度も安心!JAS認定取得 |