【建材ヒステリアル : 第2回】~網戸はアミーゴ!進化する網戸最前線~セイキ販売株式会社「セロア カセット」
こんにちは。金管楽器はトロンボーン、マット・デイモンはジェイソン・ボーン。そして私はMr.Tボーンです。様々な建材の歴史や背景をたどる「建材ヒステリアル」。第2回目の今回は、網戸について特集します。
人間にしろ家にしろ、半世紀も生きれば色々なところにガタがきますよね。先日、築50年の我が家では、裏庭の畑に続く窓の網戸が寿命を迎えました。
サッシから網が外れて、ビヨビヨに縮れた網の外周が露出。網とサッシの隙間からは、蚊やクモやハチやヤモリが入り放題でした。織田信長の楽市楽座で関所を廃止したわけではあるまいし、そんな活発に交流をされても困ります。
網戸を交換しなければ。思い立って調べてみたところ、セイキグループのWebサイトに面白い情報が載っていました。セイキは網戸の老舗です。それもあってか、「網戸の歴史」というコンテンツがありました。歴史好きの私としてはぜひともチェックしたいところ。
以下、最先端の網戸製品をご紹介するとともに、網戸の歴史も探っていきたいと思います。
巻き取れる網戸 「セロア カセット」
網戸と聞いて一般的にイメージするのは、アルミサッシに張った四角形の物ですよね。これは「パネル網戸」と呼ばれる種類です。網戸には他にも「アコーディオン網戸」や「折戸式網戸」、そして「ロール網戸」があります。
ロール網戸は網を巻き取って収納する網戸です。ロール網戸には横方向に引くタイプと、縦方向に動くタイプ(ロールアップ)があります。今回セイキでは、このロールアップ網戸の新商品を開発しました。それが「セロア カセット」です。
「セロア カセット」の機能
施工が簡単
セロアカセット最大の特徴は、何といっても施工のしやすさです。
セロアカセット取り付け3ステップ
- ブラケットを取り付ける
- レールを取り付ける
- 網戸本体部(カセット)をブラケットに取り付ける
(※施工はプロの業者が行います。)
見た目がスマート
ロールアップ網戸は、使用しないときは網を収納できるので、空間がスッキリして見えます。セロアカセットは本体の大きさを従来よりも小型化することで、よりスマートな外形になりました。
製品の特徴
セロアカセットの大きな特徴は、網戸の左右両端にあるレールに通したファスナーです。カセットに巻き取られた網は、紐を引っぱることで引き下ろされます。このときファスナーを噛ませることで、網がレールから外れないようにしているのです。これにより虫が入る隙間が生まれません。また取り付け部材も減って施工しやすくなりました。
網にファスナーを溶着することで、風にあおられて網がレールから抜けることを防ぎます。これにより、高い防虫性を実現しています。
網戸の歴史
現在、網戸には色々な種類があります。でも初めからこんなに便利な網戸があったわけではないでしょう。そもそも網戸はどのようにして生まれたのでしょうか。セイキのWebサイト等を参考にして、その歴史(ヒストリー)をたどってみたいと思います。
http://www.seiki.gr.jp/enjoy/column/amido/column06.html
網戸の源流は蚊帳にあり。
網戸が一般に普及するようになったのは最近のことで、昭和30年代からです。それ以前は蚊帳(かや)が使われていました。映画『となりのトトロ』でも、さつきとメイが蚊帳に乗って遊ぶシーンがありますね。
その蚊帳が出現したのはいつ頃でしょうか。最も古い記録としては「播磨国風土記」に記載があります。
播磨国風土記に出てくる蚊帳
賀野(かや)の里。幣丘(ぬさのおか)。土は中の上。右、加野(かや)と称(い)うは、品太天皇(ほむだのすめらみこと)、巡り行(い)でましし時、此処(ここ)に殿(との)を造りて、蚊屋(かや)を張りたまひき。故(かれ)、加野と号(なづ)けき。山と川の名も、里と同じ。
中村啓信監修・訳注『風土記 上』365頁、KADOKAWA、平成27年
(Tボーン訳)
賀野の里ってあるでしょ。ヌサの丘って言ったりもするけど。土地の豊かさは中の上くらい、まあまあ良い方かな。それでね、なんで加野っていう名前になったかというと、以前この地に品太天皇がいらっしゃったの。あ、品太天皇っていうのは応神天皇のこと。第15代天皇で、3世紀から4世紀頃の話ね。
で、その応神天皇がこの里で寝泊りするためのお家を建てたわけ。そのとき寝室に蚊帳を張ったの。それで里を加野と名づけたっていうことなのよ。山と川の名前も同じね。
また「日本書紀」の巻第十、応神天皇の段にも蚊帳に関する記述があります。
日本書紀に出てくる蚊帳
四十一年の春二月(はるきさらぎ)の甲午(きのえうま)の朔戊申(ついたちつちのえさるのひ)に、天皇(すめらみこと)、明宮(あきらのみや)に崩(かむあが)りましぬ。
…(中略)…是(こ)の月に、阿知使主等(あちのおみら)、呉(くれ)より筑紫に至る。時に胸形大神(むなかたのおおかみ)、工女等(ぬひめら)を乞はすこと有り。故(かれ)、兄媛(えひめ)を以(も)て、胸形大神に奉(たてまつ)る。
…(中略)…是(こ)の女人等(おみなども)の後(のち)は、今の呉衣縫(くれのきぬぬひ)・蚊屋衣縫(かやのきぬぬひ)、是(これ)なり。
坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋 校注『日本書紀(二)』220頁、岩波書店、平成6年
(Tボーン訳)
あれはそう、応神天皇が天皇になられてから41年目の春、2月15日のことだったわ。天皇がお宮で亡くなられたの。この2月に(中国大陸の)呉から、阿知使主(あちのおみ)という人とそのご一行様が筑紫にやってきたのよね。お悔やみを言いに来てくれたんだわ。
そのときに胸形大神っていう、今の福岡県宗像神社に祭られている神様が、阿知使主に工女を何人かお求めになったの。それで阿知使主は、一行の中からべっぴんさんを選んで大神に差し上げたってわけ。この女性たちの子孫が、今は呉衣縫とか蚊屋衣縫と呼ばれている人たちということなのよ。
ここに出てくる「蚊屋衣縫(かやのきぬぬひ)」という女性の縫製技師によって伝来したものが、蚊帳だと考えられます。とても古くから使われていたようですね!(ただし当時の蚊帳は高級品で、庶民に普及したのは江戸時代後半)
蚊帳の歴史が古いことに比べて、網戸はまだ50年あまりしか経っていません。その中でも色々な製品が生まれて、加速度的に進化してきました。そして現時点で最新の技術を備えている製品の1つが、セロアカセットなのです。
セイキグループの取り組み
セロア カセットを開発したきっかけ
セイキがセロアカセットを開発した背景には、建築業界で職人不足が深刻化していることでした。
平成23年に東日本大震災が発生。平成26年には消費税が8%に上がる4月直前、施工の駆け込み需要が増えました。震災からの復旧・復興と重なり、職人の数に対して工事量が急増したのです。
それらに加えて2020年の東京オリンピックに向けた設備の整備も、職人不足に拍車を掛けました。そのためセイキでは、経験の有無に関わらず取り付けられるロールアップ網戸が重要になると考えたのです。
セロアシリーズの歴史
「セロア カセット」に至るまでには、その前身となる製品からの開発の歴史がありました。
製品シリーズ年表
- ~1998年6月1日 「セロア」販売
- 1998年6月1日~ 「セロアⅡ」発売
- 2017年9月1日~ 「セロア カセット」発売
現在のセロアシリーズは「セロア カセット」と「セロアⅡ S型/C型」。そしてより良い製品を生み出す挑戦は今も続いています。
新しい価値を生み出すために
多様な網戸製品を開発・販売しているセイキグループは、常に新しい価値を創出することを企業理念に掲げています。
新しい価値を生み出すために、セイキではユニークな取り組みを行っています。それが年1回行われる「新商品開発コンテスト」。これはグループ全体から、社員・アルバイト問わず商品の企画を募り、優秀なアイディアを表彰するイベントです。このコンテストから実際に新商品が生まれることも少なくありません。
アイディアを考えるのは楽しいものです。私も「こんな物があったら便利だろうな」「こんな商品があったら売れそうだ」といった思いを常日頃抱えています。中には22世紀の猫型ロボットに頼まないといけないようなものもありますが。
そうしたアイディアを形にする場が与えられているのは貴重でしょう。従業員の誰もが企画に参加することで、仕事への意欲もアップしますね。
人生いろいろ。網戸もいろいろ。
いかがでしたか。網戸ひとつ取ってみても、色々な工夫や物語があるのですね。我が家で壊れた網戸は大きな引き違いタイプだったので、残念ながらセロアカセットは適しませんでした。しかしリフォームするときは、網戸のことまで考えた作りにしようと思いました。
今回私は、建材の種類が多いということは、それだけ人々の生活が多様だということに気付きました。人々の生活に寄り添う建材と、それら建材を生み出す人々を、これからもどんどん取り上げていきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
▼ロールアップ網戸「セロアカセット」|収納網戸|セイキグループ
http://www.seiki.gr.jp/products/amido/goods/seroacassette.html
この建材のポイント
オススメなのは? | 夏場以外は網を収納して、視界をスッキリさせたい。 |
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一番の強みは? | 施工が簡単。着脱できる。使わないときはカセットの中に収納するので、網が紫外線を受けずに長持ちします。 |
施工の強みは? | 従来のロールアップ網戸に比べて、施工が簡単(施工性の向上)。 |