【STONE : #01】建材としての『石』。その不思議な魅力。
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『石』と人類の付き合いは古い。そして長い。
人類の歴史上、『石』は建築の材料として太古の昔から使用されてきました。起源はといえば当然、石器時代などの人類の起源に近い頃からとなりますが、文明の発達とともにその使用規模も大きくなっていき、紀元前3000年頃のエジプト文明では壮大な神殿やピラミッドなどの大規模な建築物が造られています。その石材加工技術も現代でも再現困難なほどの緻密な加工技術が施されているのは驚くべきことです。未だに多くの謎を秘めるマヤ文明やインカ帝国の遺跡にも同様の精緻な石材加工技術が見られることなどから考えると、人類と石の付き合いは有史以前の古くから現代の価値観では計り知ることができない『石』との付き合いがあったと思われます。
身近にある石の特徴を理解し最適な加工法と利用法を見出していることから見ると、相当な研究と試行錯誤から成り立っているのだろうという想像はできますが、途方もない時間と労力が必要なことなのでしょう。現代的な視点からの発想で見れば、まだまだ分からないことばかりでその世界は奥深いものがあります。
「どうやってこの石を切り出してきたのだろう」とか「どうやってこの高さに積み上げてきたのだろう」とかは、クレーンなどが当たり前の現代人にとっては不思議以外の何物でもないです。精密な建造をコンピュータなどの計算機に頼る以外のすべを持たない現代人にとってピラミッドの方向性や神殿の石柱の構造などは驚異の結果に見えます。
もちろん歴史の表舞台に出てこない人々の暮らしの一面にも『石』は重要なかかわりを持っていました。例えばインダス文明の遺跡の中には都市がほぼ『石』で製造されていて、道路や水路以外にも建物、下水道などにも『石』が使われています。そのシステムや構造は高度に見える現代の都市機能と比べても決して前近代的なものではなく十分に機能したものであったと考えられていますし、ただただ驚くばかりです。
「文明は進化し続けている」という発想を、根本から問い直す必要があるのかとも考えさせてくれるのが、つまりは『石』の存在なのです。
そういった『石』を建材として使ってきた歴史が、いろいろな材料を駆使する現在の建築技術の基礎になってきました。
長い石との付き合いの歴史や研究の中で人類はコンクリートの技術を開発していきます。ローマ時代という今から二千年以上も前に、石灰岩をいったん砕いてさらに硬化させるという技術がコンクリートの基礎的な技術となっていきます。この発見=発明によって以後の建築様式や建築技術は大きく発展していくことになりますが、考えてみればこれも石灰岩という『石』なわけですから、現在のコンクリートによる都市の発展はやはり、『石』の文化の上になり立っているとも言えるのかもしれません。
話を建築材料としての『石』に戻すと、コンクリート技術の発展とともに『石』の使用は部分的なものに限定されてきました。西欧の建築では床材や壁材など薄く加工した石を張って使われるようになっていきます。中世の建築物である教会などに見られるような形式は、1000年以上経ってもなおその強固な性質と独特の風合いを残していて、今でも人気が高い加工法として広く採用されています。
『石』が持つ魅力は、現代の建築においても多方面で認められ採用されていますし、人類が歩んできた『石』との歴史はまだまだ新しい可能性すら感じさせてくれるものでもあります。
これから当コラムでは『石』をテーマに建築材料としての石とその魅力を、少しだけ掘り下げて見てみようと思います。2話目は石材の種類についてご紹介します。
まとめ
- 人類が建材として石を使ったのは、ピラミッドが始まりだと言われている。
- その後、パルテノン神殿やローマ建築に使用された。古代ローマではコンクリートも発明された。
- 中世になると教会で多く使われている。石は人類の歴史とともに発展してきた。