【STONE : #04】今も手に入る!色々な石種を使った建築事例<明治~昭和>
石材シリーズ一覧
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国会議事堂は日本の『石』の建築のシンボルです。
『石』がふんだんに使われている日本の代表的建築物といえば、国会議事堂をおいてほかにはないと言えます。昭和11年に完成した国会議事堂は、当時はまだ戦前なので帝国議事堂という名前でしたが、明治時代から計画され紆余曲折があって、大正時代に着工したものの約17年の歳月をかけて完成したものです。現在では当たり前になった鉄筋コンクリート造ですが、欧米から取り入れた先進の建築技術を駆使して建築されました。そしてこの建築物が、空襲にも耐え終戦を乗り越えて、日本の近代建築のシンボルとなっていくのです。
国会議事堂には、内外装にふんだんに石材が使用されています。大きく分けて、外装には『花崗岩』、内装には『大理石』となります。
外装は、3種の『花崗岩』による石積みの仕上げとなっています。この石の中でも、特に多く使われたのは広島で産出する『桜御影(さくらみかげ)』と呼ばれる花崗岩で、淡いピンク色をした表情が特徴のために桜と名付けられています。さらに国会議事堂に使用されてからは、『議院石』とも呼ばれるようになっています。
内装は、33種類の大理石、2種類の蛇紋岩をはじめ、珊瑚石灰岩など細かな意匠に合わせて様々な石が使用されて仕上げられています。床、内壁だけではなく、各所にアクセントを加えるように石が使用されているようです。
特筆すべきは、これらの石のほとんどが国内産であることです。さすがに日本を象徴する建築物だけあって、現在でもその価値は計り知れないものがあるようです。
まだまだあります日本の石材を使った建築物。
国会議事堂のほかにも日本の石を使った建築物は東京には多く実存しています。
代表的なものを挙げると、
- 日本銀行本店 (花崗岩、安山岩)
- 東京駅 (稲田石)
- 最高裁判所 (稲田石)
- 東京国立博物館本館 (大理石)
- 国技館 (稲田石)
- 三越本店 (花崗岩、大理石)
などがあります。どの建物も重厚でモダンな雰囲気のある建物ばかりです。
東京以外にも大阪の中之島公会堂なども有名で、そのほか全国各地にも数多く残されています。そのほとんどが明治期から昭和初期にかけて建築されたものですが『石』の耐久性は高く今なお風化に耐えてその堂々とした姿を見せてくれています。
石造り建築の特徴とは?
酒蔵などの石造りは有名ですが、その特徴は内部の温度を、外気温を遮って一定に保つことができることにあります。夏季には高温多湿になる日本では石造りの建物は重宝されたようです。コスト面から一般の住宅にはあまり普及しませんでしたが、現代の高断熱住宅は基本的に酒蔵などの機能性を研究して利用されています。
また、地震や火事などの災害に強いことも大きな特徴です。戦国時代の城壁や石垣の技術が現在まで生きている証拠でもあります。
東京には多くの石造り建造物が残されています。いずれも歴史的な価値を持った素晴らしい建築物ばかりです。2020年の東京オリンピックに向けて、今東京では数々の建築物が建てられているのもまた興味深いですが、この新しい建築物と歴史ある建築物の融合する都市としての魅力を楽しみに出かけてみるのも面白いかもしれません。
次回は、石造り建築の可能性を考えてみます。
この記事のポイント
- 国会議事堂は、ほとんどが国産の石材で造られている。
- 両国国技館や最高裁判所など、今も残る代表的な近代建築に石が使われている。
- 石材の耐久性・断熱性は現代の建築にも生かされている。