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【建材ヒステリアル : 第1話】~ 生きとし生けるは木の温もり~(株)シオン「U-OIL+ ウェザープロテクター」

はじめまして。Mr.Tボーンと申します。今回から建材ダイジェストのライターとして活動することになりました。よろしくお願いいたします。

さて建材ダイジェストでは、新たなコーナーが始まりました! その名も「建材ヒステリアル」

ヒステリアル(Histerial) は History (歴史)と Material (材料)を掛け合わせた造語です。本コーナーの目的は、様々な建材商品が生まれた背景や歴史をたどり、「建材って色々あるんだな」「面白いな」と、皆様に興味を持っていただくことです。

それでは記念すべき第1回、さっそく見ていきましょう!

今回のテーマ : 木造住宅のこれまでとこれから

 私が住んでいる家は、祖母の代から続く日本家屋です。築50年。古い家ですが、ボロいということはなく快適に暮らせています。所どころ床がきしむのはご愛嬌です!

そんな私はあまり意識したことがなかったのですが、日本では「木離れ」が進んでいるようです。コンクリートやアルミニウムなど、木材以外の材料を使った住宅が増えて、木の文化が衰退する危険があるとのこと。

こうした現状に対して、木材塗料の面から打開を図る企業があります。それが株式会社シオン。本記事では、シオンの商品や取り組みを紹介すると共に、木造住宅の現在と未来を考えたいと思います。

岩手から日本の木を守る – 株式会社シオン

株式会社シオンは岩手県にあり、自然塗料の製造・販売を行っています。多様な樹木が育つ岩手県から、木の文化を発展させるという思いを持って商品開発に取り組んでいます。そして今回新たに発売された商品が、「U-OIL+(ユーオイルプラス) ウェザープロテクター」です。

国産高耐候自然塗料「U-OIL+ ウェザープロテクター」
国産高耐候自然塗料『U-OIL+ ウェザープロテクター』

ウェザープロテクターは、木材・木部を保護する塗料。天候の変化に対する耐性(耐候性)が高く、屋外での使用で最長8年色落ちしにくい高い耐候性を有します。これは「屋外の木への塗装は2年もすれば色落ちしてしまう」という業界の常識を覆す機能です。木の壁やフローリングなどを傷や腐食から守り、装飾としての効果も持続する高性能な製品と言えるでしょう。

開発までの経緯

ウェザープロテクターは、同社商品の「U-OIL+ ファイアガード」からのつながりがあります。

国産高耐候自然塗料「U-OIL+ ファイアガード」
国産防災自然塗料『U-OIL+ ファイアガード』

ファイアガードは防炎塗料であり、「燃えやすい」という木の弱点を解消するために開発されました。そして次にシオンが取り組んだのが、木の劣化を防ぐという課題です。

きっかけは東京オリンピックの新国立競技場。この競技場は木材を使用する予定であり、シオンは競技場の屋外木部に使う塗料を提案しました。そのとき「屋外木部に使う塗料は6~8年色落ちしにくいものが欲しい」という要望があったのです。その要望に応える商品の開発を進め、生まれたのがウェザープロテクターです。

「綺麗な木を長く保ちたい」というニーズは、競技場だけではなく一般にも広く存在します。近年は木造住宅が見直され、新築物件も少しずつ増えてきています。ウェザープロテクターは、これからの木材保護塗料を考えるうえでのスタンダードになるのではないでしょうか。

生き物である木を使う魅力

木は生き物です。そのため同じ塗料を使っても、塗装の仕方や木の種類、雨雪や日光の量によって耐用年数が変わってきます。この点は非常に繊細で難しいですね。

しかしその難しさが木の魅力であるとも言えます。日本の古い木造住宅は、丸太を組んで外壁にしていました。丸太は雨が降ると水を吸って膨らみ、外と内を遮断します。逆に晴れると水分が蒸発して隙間ができるので、屋内に空気が通ります。日本人は生き物である木を使って、快適な住環境を手に入れてきたのです。

木造住宅の現状

ところで自然塗料に欠かすことのできない性能は何でしょうか。それは「安全性」「作業性」の両立。人や環境への害を最小限に抑え、なおかつ塗装のしやすさも追求していくことが、自然素材を使った塗料の「ウリ」でしょう。この2つの観点からシオンが開発したものが「U-OIL(ユーオイル)」。これが後のファイアガードやウェザープロテクターへとつながっていくことになります。

国産自然塗料『U-OIL ハード』
国産自然塗料『U-OIL ハード』

シオンがU-OILを開発した背景には、日本の木造住宅を見直し、発展させたいという思いがありました。ここ数十年、木の家が徐々に減ってきているからです。

総務省統計局によると、平成25年度の木造住宅の割合は57.8% 。昭和53年の81.7% と比べると、35年で20% 以上減少したことになります。総数は増えているのですが、それ以上に非木造の住宅が急増していることが分かります。(総務省統計局「住宅の種類,建て方及び構造」http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/nihon02-1.pdf 表2-4)

木離れが進む日本

アメリカ的な「大量生産・大量消費」の文化が日本にも流入し、木よりも安価で使いやすい合成素材が多く使われるようになりました。また林業に携わる人も減っています。林業従事者は平成2年には10万人いましたが、27年には4.8万人にまで減少しました。(農林水産省「林業に関する統計」http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/15.html)

近年は徐々に木が見直されているものの、国土面積の6割が森林である日本としては低い水準でしょう。「このままでは古くから日本にある木の文化が、次世代に受け継がれないのではないか」という問題意識が生まれて、U-OILシリーズを開発することになったのです。

木の良さを見直そう!

木造住宅を避ける大きな要因は、「メンテナンスが大変」ということです。

塗装現場 | 建材ヒステリアル
(画像はイメージです)

先述したように、従来の塗装は1、2年で劣化が目立つようになります。そのため1、2年ごとの塗り替えが必要ですが、一般の人々がそのペースで行うのは無理でしょう。

例えばこのように、ウッドデッキを設置したものの、3年で撤去してしまったコーカイ事例もあります。

そのためメンテナンスが行われず、木が朽ちていってしまう。そうなるよりはコンクリートなどの非木材の方が便利だと考えるのは、仕方のないことだと思います。

ウェザープロテクターは耐用年数を最大8年にまで延ばすことで、このような考え方を見直す契機にしようと考えています。

「木のメンテナンスは面倒」という意識が変われば、それを入り口として、木の手入れをする楽しさや愛着を感じられるようになるでしょう。そのためにもシオンでは、木の楽しさをより多くの人に知ってもらうための取り組みを行っています。

木は再生の象徴 – 「木育」の取り組み。

シオンでは木の文化を広める社会活動として「木育」に取り組んでいます。今回は、岩手県岩泉町の森林に赴いて、木に関する様々なことを学び、体験するイベントです。まずは大人たちが木に興味を持ち、それを子供たちに伝えていく。木の文化を次世代へ受け継いでいくための活動です。

▼木育については、こちらをご参照ください。
第2回 木育 in 岩手 イベント概要

また岩泉町の取り組みについては、こちらの記事でもご紹介しています。あわせてご覧ください。

この取り組みを知って私が思い浮かべたのは、伊勢の神宮で20年に1度行われる式年遷宮(しきねんせんぐう)です。20年ごとに神様の住まいである「宮」を全て移す祭事ですが、これには技術と精神の継承という目的があるのでしょう。

建築物が定期的に刷新されることで、その建物に宿る歴史や物語が古びることなく次代へ受け継がれてゆく。常に変化を続けることで、変わらぬ魂を現代社会に生き生きと内在させる。これを形ある行動として実践するためには、木でなければいけないのです。

命は巡る。建物も生まれ変わる。

古代ヨーロッパでは永遠不滅を求めて、石造りの頑強な建造物が造られました。パルテノン神殿は最も有名な例でしょう。古代の西洋人は、永遠に変わらぬ真理を建物に象徴させようとしたと考えられます。

一方の日本では、石やコンクリートに比べれば壊れやすい木材を選びました。木は生き物です。生き物と付き合っていくためには、その変化を常に意識して対処しなければなりません。古くなったものに手を加え、また新しく造り直すのです。

破壊と再生。そのサイクルは生命そのものであり、自然に対する日本人の考え方を育む土台になったのではないでしょうか。

自然界においても、木はいずれ朽ちます。山火事で灰になることもあります。しかしその朽ちた木々が土を豊かにして、新たな命を芽吹かせるのです。木造住宅に住むということは、そうした生命の循環を無意識にでも感じることだと思うのです。

2020年には東京オリンピックが開催されます。新国立競技場をめぐっては、建築構造や工期の面で様々な問題が出されています。しかし破壊とともに再生の象徴でもある木造建築が、あの巨大な建物で完成したならば。それは単なる遺産(レガシー)で終わらない、次なる変革への展望を秘めた建築物になるのではないでしょうか。シオンの挑戦を見守りたいと思います。

まとめ

本記事を書き終えて、私は改めて我が家を見返してみました。建造から半世紀。3世代にわたって共に過ごしてきた月日に思いを馳せます。木の家と、家の土台となる木の文化に感謝して、これからも暮らしていきたいと思います。

U-OILを開発した、製造開発責任者の藤田 悠さんは、「本来、木と共に暮らしていた日本人は、木に対する愛着は他国に負けていません」と語ります。そして「昔からある素晴らしい木の文化を再度見直して、新しい木の文化を取り入れて発展させていく」ことに力を注いでいるといいます。

U-OIL開発者 藤田さん
U-OIL開発者の藤田さん

シオンの取り組みは豊かな住まいを補助するだけではなく、人と自然が共存する未来にもつながっていくことでしょう。

いかがでしたか。建材ヒステリアルでは、これからも様々な建材や会社をご紹介して、建材や社会の過去、現在、未来を考えていきます。最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

▼U-OIL⁺ウェザープロテクター / 屋外専用|木部用 | U-OIL⁺とは・・・ | シオン / XION|国産●自然塗料【U-OIL(ユーオイル)】
https://u-oil.jp/u-oil-plus/weatherprotector

商品データ
U-OIL+ ウェザープロテクター
  • 用途 : 木材保護塗装(屋外専用)
  • 主な特徴 : 人と環境に優しい自然塗料で、最長約8年、品質を保つ。66色のカラーバリエーションあり。
  • 認証 : 一般財団法人 日本塗料検査協会により「JASS18 M307 木材保護塗料(WPステイン)の規格適合品である」と認定。
  • 価格 : 下表の通り。耐候性を高める成分の配合率に違いがあり、予算に適したものを選べる。
配合率100% 75% 50%
耐候年数(最大) 約8年 約6~7年 約5~6年
価格 16,000円~ 15,500円~ 15,000円~

この建材のポイント

オススメなのは? 害が少なくて長持ちする木材塗料が欲しい。
一番の強みは? 自然塗料の安全性と効果の持続性
施工の強みは? 一度塗れば、最大約8年間は色落ちしない。
建材ダイジェスト 編集部

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